ずっと気になっていた…が、入りづらい!
その店構えに、
躊躇していた店がある。
桑名駅からほど近い、
一号線沿いのマンションの1階。
ぎりぎり、酒屋だということはわかる。
恐らく角打ちもやっている。
角打ちとは、
酒を販売する酒屋の中で呑めるところ。
入りたい。
でもめちゃ入りにくい。
いや、今日こそは勇気を出して…
扉のむこう。
恐る恐る扉をあけ、聞いてみた。
―—こちらでお酒、飲めますか??
『おー!飲めるよ、座んな座んな』
そう、おじさま方が、一同に迎えてくれた。
店の真ん中にドーンとあるソファ。
そしてカウンター。
皆さんが丁寧に、勝手を教えてくれる。
ゆえに、店の人がどなたかわからない。
とりあえず缶チューハイを頼んでみたところ、
持ってきてくれたのが、
この店の”おかあさん”だった。
桑名藩御用達の塩の問屋だった酒屋
塩半商店
この店の名前だ。
かつては、桑名藩に塩を納めていた問屋で、
創業者の名前である半三郎から付いた屋号。
酒屋になったのは、
昭和15年とのことだから、
かれこれ78年。
40年来の常連客なんてざら。
『自分は20年の常連。ヒヨッコさ』
そう笑うおじさまもいた。
営業時間は11時~20時。
13時半頃から夕方までは中休み。
つまり昼から飲める。
『最高やろ』
今日も昼から飲んでいるというおじさまが、
コップ酒を飲み干し、ニヤっと笑った。
文化人、集う
ここにメニューはない。
お酒やつまみは基本セルフ。
清算は最後なので、
空き缶や袋は捨てずに、そのままに。
つまみは乾き物以外にも、
冷奴や納豆などもお願いできる。
聞くところによると、
塩半商店には教授や教師、地域活動家など、
文化人が多く集っているのだそう。
趣味の幅も広く、
情報交換だけではなく、
色んな事が通じ合えるのだという。
私もこの日、
桑名の文化についてあれこれ教えてもらい、
有意義な時間を過ごすことができた。
--お酒はやっぱり誰かと飲みたいですね。
客:『そうやろ。ここには軽く飲みながら、話をしたい人が集まってくるよ』
そう話してくれたお客さんの通い歴は、まだ3年。
ひよっこどころか、
卵レベルということになる。
そのお客さんも、
当時は私と同じく、
店先を行ったり来たりしながら、
入るのを躊躇していたところ、
たまたま店内に知り合いがいるのが見え、
勇気を出せたと教えてくれた。
『そういうお客さん多いね』とおかあさん。
おかあさんは昭和40年に、
青森からこの桑名に嫁にきた。
桑名のガサガサしていない人間模様が心地よいという。
そんな話をしているうちに
時刻は19時半過ぎ。
早めのハッピーアワーを済ませたお客たちが、
続々と帰っていく。
ふと気付いたのが、
皆さんお会計時、
紙幣のやりとりがほぼないということ。
『ありがたいやろ。センベロにも届かんくらいで楽しめる、最高や!』
洒落たハットを頭に乗せ、
ほろ酔いで帰っていくおじさまを見送り、
私も缶チューハイを飲み干した。
塩半商店
住所:三重県桑名市寿町1-15
電話:0594-22-1095
福田ミキ。OTONAMIEアドバイザー/みえDXアドバイザーズ。東京都出身桑名市在住。仕事は社会との関係性づくりを大切にしたPR(パブリックリレーションズ)。
2014年に元夫の都合で東京から三重に移住。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。
都内の企業のPR業務を請け負いながら、地域こそPRの重要性を感じてローカル特化PRへとシフト。多種多様なプロジェクトを加速させている。
組織にPR視点を増やすローカルPRカレッジや、仕事好きが集まる場「ニカイ」も展開中。
桑名で部室ニカイという拠点も運営している。この記者が登場する記事