ホーム 04【知る】 伊勢居人〜伊勢で暮らすディープな人たち〜NO.07 上田史弥

伊勢居人〜伊勢で暮らすディープな人たち〜NO.07 上田史弥

伊勢(いせいじん)≒異星人」。それは伊勢で暮らす特徴あるディープな人たち。

そんな伊勢居人の方々の伊勢の暮らしや仕事に迫ろう!というコンセプトの基、お送りしています。NO.07は、生まれてから高校まで伊勢で育ち、兵庫県で「修行」をして戻ってきた方を「伊勢」として、お送りさせて頂きます。

伊勢居人NO.07は、上田史弥さんです!
上田さんは、 伊勢市駅または宇治山田駅より浦田町行の市バスで「中之町」というバス停で下車後、徒歩1分の場所にある200年以上の歴史を持つ有名老舗旅館「麻吉」の若旦那かつ板前さんです。

麻吉旅館は、伊勢でも特に有名な観光地ですよね。五大遊郭の一つである伊勢古市に唯一残る登録有形文化財の旅館で、様々なメディアにたくさん取り上げられています。この時代に、老舗旅館を経営する若旦那上田さんについて、迫っていきたいと思います。麻吉旅館の玄関での上田さん

実は上田さん、私と歳が一つしか違わないんです。風格があってとても同年代とは思えません。この落ち着きはきっと高校時代から続けている弓道が深く影響している気がします。一度伊勢を出て戻ってきて、あの麻吉旅館の料理を始め運営をも担う上田さんは、伊勢居人≒異星人としての魅力がたくさん詰まっている気がします。そんな上田さんに、迫っていきます!

「美味しさの先にある物語を届けたい」

伊勢人NO.07上田 史弥(うえだ ふみや)

Q01_上田さんのご出身はどちらですか?
 伊勢市のこの麻吉旅館の長男として生まれました。小学校、中学校と地元の学校を卒業して、高校は皇學館高校に進学しました。その後、兵庫県の大学に進学しました。一応、文学部日本語日本文学科という科に通っていたのですが、実は弓道のスポーツ推薦で進学しています。
高校から弓道を始めて、努力の結果、弓道で大学に進学できたのですが、弓道をやるために大学に通っていたので、勉強の単位は必要最低限しか履修していませんでした笑 とにかく学生時代はずっと弓道をしていました。

大学卒業後、料理の専門学校に1年間通いました。調理師免許を取得後、板前の修行を始めたのですが、実家に戻る時期を、前回の式年遷宮の1年前、平成24年と決めていました。式年遷宮の1年前から麻吉の厨房に経ち、1年間麻吉をしっかり経験してから、遷宮の年を迎えたかった。ですから、修行の時間が2年間しかありませんでした。

Q02_調理師の修行時代はどのようなことをされたんですか?
 専門学校卒業後、フリーターの立場で、とにかくすぐに仕事をさせてもらえる職場で、料理の経験が積める店を探し、色んな厨房に入りました。和食がメインです。2年のうちの後半一年は、一人で調理をしている料理屋で働かせて頂きました。割烹のお店でメニューや金額が書いてないようなお店です。たまたまそのお店がアルバイトの募集をしていて、なけなしのお金を持って食べにいったらとても美味しかったので、アルバイトのお願いをしました。1年間同じ場所で仕事をすると、食材も見えてくるんです。

千島:食材が見えてくるとはどういう意味ですか?

食材が見えてくるというのは、春夏秋冬に使用する食材は、どんなものか知ることができる、ということです。

Q03_調理師を目指すきっかけは何だったんですか?
 やはりこういうところに生まれて育ったからには、何となく麻吉を継ぐ意志がありました。大学時代は本当に好きなことをやらせてもらっていましたが、料理の専門学校に行こうと決めてからは、明確に調理師になると決めました。

Q04_旅館麻吉をどのように運営されているんですか?
 私が26歳で戻ってきたときの麻吉は、母親が女将、祖父母が厨房に立っていました。私はその補佐を努めることから始めました。今は、私と妻で厨房に立っています。その他はアルバイトの方にも協力してもらっています。
旅館については、建物や歴史が素晴らしいと言われていますが、私達が発信していることは少なくて、周りの人達に言って頂いています。また、私が伊勢に戻ってきて6年目になりますが、徐々に「お酒の出し方」や「料理の出し方」についてのご感想を頂くことが増えてきました。私は、調理師として、麻吉の良さは食事の内容にもあることを、とても伝えていきたいと思っています。

旅館麻吉 客室風景
旅館という場所は、「夜お食事をして」、「寝泊まりして」、「朝お食事をして」、「また旅に出る」という流れを楽しめることが魅力だと思います。ホテルとはまた違った空間と時間の流れです。建物の良さと洗練された料理を味わって頂き、「旅館で過ごす価値」を提供していきたいです。
そのために、時代に合わせた料理を常に研究しています。例えば、祖父母が受け継いできた伝統の料理へ尊敬しつつも疑問を持つことから始め、今では仕入れ先も刷新しました。
      
煮付け料理                   壺煮料理
そのため、今では食材の勉強も始めています。海や山や酒蔵の生産者に会いに行ったりしています。生産者と会い「生産者の思い、背景、物語」と「食材」をセットにしてお客様に届けることで、料理に深みが出てくると思います。自分の知識も増えていくので、実はプライベートの時間を、このような研究に使っています、これがとても楽しいんです笑

大台町のわさび園にて生産者との交流
料理に力を入れているため、18時から19時の時間で夕食のみのご提供も始めています。お食事のコースは、6品から7品とご飯と汁物で4,000円程度が基本です。料理は必ず1品ずつご提供しています。空間は完全個室なので、他のお客様を気にせずにゆったり料理やお酒を楽しめる空間になっています。ぜひ、地元の方、県内の方にも、お食事のみでご利用頂きたいと思っています。
 
旅館麻吉で料理を楽しめる個室空間

Q05_麻吉にはBar麻吉がありますが、どのようなBarですか?
 Bar麻吉は、私が個人でやっている日本酒Barです。始めてから1年半が経ちますが、お客様がいらっしゃったときに開けるという感じです。
私がいた兵庫県は日本酒が有名な地域で、兵庫の地酒を多く扱う居酒屋さんで勤務させてもらった事から興味を持ちました。伊勢に戻った頃は、まだそんなに日本酒が飲めなかったのですが、三重県には数多くの酒蔵があることを知り、料理に日本酒を使っていこうと思いました。酒蔵を巡るようになり、最近では顔を覚えてもらうようになってきて、日本酒を料理に上手く使っていくことができていると実感しています。
また、日本酒のイベントも開きました。古市街道酒詣と題して2016年の春、秋、2017年の春、秋と現在4回実施しました。

蔵元を楽しむ上田さん               2017年秋に実施した古市街道酒詣

上田さんこだわりの日本酒

Q06_Bar麻吉へは、お客様はどのようにしていらしているんですか?
 来られる方は、古市辺りで飲んでいて最後の締めにいらしたり、麻吉に宿泊の方が多いです。でも、麻吉から徒歩1分のところに「中之町」というバス停があるんです。ぜひ、皆さんにはこのバス停を知ってもらい、利用して頂きたいです。「伊勢赤十字病院」と「浦田町」を繋ぐ「伊勢市内線」というルートなので、宿泊のお客様は外宮にも内宮にもいけて便利な立地なんです。中之町から伊勢市駅方面の最終は20時後半なので、もっと気楽にバスを利用して頂きたいと思います。
 
Bar麻吉の風景
 
200年続く旅館「麻吉」の風景

Q07_
お休みはありますか?プライベートではどんなことをされていますか?
 先代までは、明確な休日がなかったため、プライベートの時間がほとんど取れませんでした。現在は休日を設定し、しっかりプライベートの時間を作るように運営改善を行いました。そうすることで、先程述べたように、料理の研究をしたり、伊勢市駅前辺りで主に日本酒の飲み歩きができるようになりました。
後は、たまにですが弓を引きに行ったりします。神宮弓道場というのが神宮にあり、弓道の聖地です。そこに行ったりしています。


伊勢市の有名老舗旅館は、上田さんによって伝統を継承しつつも、常に進化をし続ける努力をされている方でした。麻吉は「旅館」だけでなく「料亭」でもあるんですね。ぜひ、みなさん予約をしてみて下さい。

プライベートの時間に、料理と素材の研究をする上田さんからは、

「美味しさの先にある物語を届けたい」

という思いを感じました。
伊勢の市街地に住んでいるため、自転車とスクーターで過ごしている私ですが、バスを利用してみようと思った取材でした。

ディープな人は、こだわりに終わりが無い。

第8号も、ご期待ください!

チシマタカヒロ

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