津市から志摩市へ、納品仕事の帰り道。
志摩市浜島へ立ち寄った。
雨に濡れる、絶妙にカラフルな漁村の風景を眺めていた。
カツオを持って歩いている、おじさんに出会った。
港町であるここ浜島に、ご当地ラーメンがあると聞いた。
時間は、お昼の1時過ぎ。
昼食はコンビニでおにぎりでも買って、帰りの車中で食べようと思っていたのだが・・。
グーと鳴った胃袋は「まぁ雨やし、ちょっとゆっくりしませんか?」と、急ぐ私にブレーキをかけた。
自然で心地良い、お店の人との会話。
車で数分、お店に到着。
カウンターと座敷が数席。
遅めの昼食だったので、店には私一人だった。
店のお母ちゃん:いらっしゃい!お茶にします?水にします?
明るい声で店のおばちゃんが聞いてくれた。
お茶で、と告げると・・。
店のおばちゃん:あったかいお茶にします?雨降ってきましたね。
あえて書くが、この店はお初だった。
しかしそんな感じがしない。
店の人の会話が、とても自然で心地よかった。
私:めひびラーメンが人気ですか?
店のおばちゃん:そやなぁ、元祖ラーメンも出ますよー。
決められない私。
迷っていると・・。
店のおばちゃん:めひびラーメンにチャーシューとかトッピングしましょか?
私:それ!それで。
ここの味だけは、続けたくて。
カウンターで見覚えのあるキャラクターに見つめられながら、店のおばちゃんとのお話しは続いていた。
私:ここはいつからやってるんですか?
店のおばちゃん:私が小学生のときに母が始めたんです。母は一年前に88歳で亡くなったんですが、凝ってる人でね。メンマも手造りにこだわってて。ネギやニンニクもとなりの畑で育てとるんです。
店のおばちゃんは、よりこさんという名前だった。
よりこさんは、小さい時から母の背中を見て育った。
私:お客さんは地元の人が多いんですか?
よりこさん:そやなぁ。でも懐かしいって言って来てくれるお客さんもいます。さっき来てくれたお客さんは「おかあちゃんおるー?」って、数十年ぶりに尋ねてきてくれました。
よりこさんのお母さんはヨネコさん。
ヨネコさんは朝起きたときから寝るまで鉢巻きを巻いている、そんな人だったという。
よりこさん:ヨネコさんは一回もお店を継いで欲しいとは言わなかったんです。でもなんか、ほっておけなくて。
よりこさんは名古屋の大学に進学。
在学中も店のことが気になり、週末には手伝いに帰ってきていた。
そしてお子さんを育てながら、母と一緒に店を切り盛りしてきた。
よりこさん:ここの味だけは続けたくて。そう私に思わせたヨネコさんは、私を上手に育てたんやと思います。
めひびの食感と細麺が、澄んだ鶏ガラスープに絡む。
懐かしくも新しい。
気がつくと私は、美味しいと何度も口に出していた。
よりこさん:ニンニク擦って、入れましょか?
よりこさんはとなりの畑でニンニクを摘み、その場で擦って出してくれた。
採れたて、擦りたてのニンニクをラーメンに投入。
味に深みが出て、やみつきになった。
そして、ついついスープを飲み干した。
私:ごちそうさまでした。美味しかったです!また来ます。
よりこさん:また寄ってなぁ。
店を出ると小雨は降り続けていた。
よりこさん:傘、お貸ししますけど。
私:大丈夫です。ありがとう。
よりこさん:雨やで運転、気をつけてなぁ。
店を出たらすぐに海がある。
少し歩こう。
海沿いは、ビン玉ロード。
夜にはライトアップも。
また、夕涼みに立ち寄ろうと思った。
ねこは雨宿りをしていた。
雨を眺める。
そんな時間も悪くない。
西口屋
三重県志摩市浜島町浜島2872-1
tel 0599-53-0574
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事