みどりの絨毯が美しい英虞湾。
眺めているだけで気持ちがいい。
志摩の賢島からリアス式海岸を南下。
一面に広がるあおさ養殖。
南伊勢で、あおさ漁師さんに出会った。
豪快に、ザブーンとあおさの苗を投入。
漁師さんにいろいろ聞いてみた。
漁師さん:あんた、どっから来たん?
私:津です。いつからあおさ漁師をしているのですか?
漁師さんは中学校を卒業後、大工をしていたが、父親の仕事の継ぐため漁師になったらしい。伊勢海老の漁も行っている。
私:なんであおさって、干した方がおいしくなるのですか?
漁師さん:乾燥させると風味が増すんさ。最近では人口的に機械で乾燥させるところもあるけど、やっぱ昔ながらの天日干しが一番うまい。昔の人は頭がよかったんやな。
太陽の光が降り注ぐ海を眺めていると、素直にうなずいてしまう。
漁師さん:いくら偉いさんでも、自然には勝てん。
私:なるほど。ありがとうございました。次、行きますね。
漁師さん:おーう!最近取材ばっかり受けとるわ(笑)。気をつけてな。
漁師さんと別れ、次にむかった。
道中、南伊勢で少し気になる感じのサンタ。
おーい!
おーい!
と、橋のむかいにもサンタ。
誰かが衣裳をつくって、毎年着せているのだろうと想像すると、ジワりとあたたまる。
さらに道中・・・、あれ?
サンタになっていた江戸時代の豪商、河村瑞賢とも別れて次へ。
まるで山の中に突っ込んでいく感じ。
山々があって、急に海。
平地が少ないリアス式の自然は、ダイナミックそのもの。
大紀町錦の海。
草花にいやされながら、
山を抜け、トンネルをくぐれば、
紀北。
深くなっていく山々。
木の国、紀伊半島。
神秘的な自然。
紀伊長島の道の駅マンボウへ。
店名のとおり、マンボウや
トコブシ、
亀の手という名の貝や、
郷土料理、かつを生ぶし。
以前、生ぶしを薄く切って、あつあつご飯に刻んだショウガやネギ、キュウリとのせて、醤油を垂らして食べると聞いた。
想像しただけでも、美味しそうだ。
手際よく魚をさばいているのは、魚屋魚匠海人の橋倉さん。
いっしょに昼ごはんをよばれることになった。
シマアジ、マハタ、ブダイなど新鮮なお刺身をのせた贅沢な海鮮丼。
橋倉さん:盛り付けにセンスが問われるでな(笑)
と、さすが魚屋さん。盛り付けがすばらしい。
一方・・・、
わたし:うぅ・・。なんか、すみません・・。
わたしは、残念な盛り付けをしてしまった恥ずかしさをこらえながら、橋倉さんにお話をうかがった。
みなさまのなかにも、橋倉さんをご存知の方は多いと思う。
テレビやSNSなどでよく見かける。
橋倉さん:いろんな人がSNSにアップしてくれてるみたいやな。テレビも紀伊長島に魚の取材依頼がくると、なぜか自分のところに声がかかるんさ。
そういう橋倉さんは、個人でFacebookをしていない。あまり興味がないという。そして自ら表に出たいタイプではないと聞き、意外だった。
橋倉さん:でも自分が前にでて、地元の宣伝になるんやったらいいかなと。
国道沿いの道の駅マンボウで魚などを販売しているのも、半分ボランティアだという。紀伊長島からさらに南へ高速道路が開通して便利になった反面、国道を使う観光客は減る中で、道の駅マンボウで地元の魅力を発信し続けている。
橋倉さん:道の駅に地元の美味しい魚を持ってきて、こういう素晴らしいものがあることを知ってもらい、少しでも地元に人がきてくれたらそれでいいと思う。
そんな橋倉さんや、地元を想う若者なども多く出店する、年末大港市が今年も開催される。
三重県最大級の食材市として今年で12回目、12月22日(金)〜30日(土)の長期間の祭りだ。
詳細はこちら(紀北町観光協会)。
橋倉さんと別れ、次に向かう。
いつも通るたびに、なんかかっこいいなと思う造船所を通過して、
OTONAMIEでも話題になった、無化調らーめんケンぞ〜を通過。
時間の都合上、尾鷲からは高速で熊野にむかった。
日本最古の神社といわれている世界遺産、花の窟神社(はなのいわや)に到着。
伊勢神宮の天照大神の母であるイザナミが祀られていると、日本書紀にある。また、出産と同時に母イザナミを焼き殺してしまった火の神カグツチの御陵もイザナミを眺めるかのように鎮座している。
社はなく、巨岩がご神体。
ここは黄泉の国(死者の国)へ通じるという。
いよいよ自然崇拝の地、熊野に入った。
いつも思うが、熊野にくると太陽の光がやわらかくも力強いと感じる。
花の窟の前にある階段を上がれば、
スーと視界が開ける。
日本一長い砂礫海岸、七里御浜。
流木が、生まれ育った遙か彼方を眺めているよう。
まるで偶然にできた、アートのようだ。
熊野で太陽の光をやわらかくも力強く感じるのは長い海岸や、やわらかい岩肌のせいかも知れない。
やわらかく強い母のような光。
それは天照大神の母イザナミのイメージと重なる気がした。
古代より自然に神々が宿ると信じていた、日本に根付く自然崇拝。
太陽、食、風、雨などの神が祀られている伊勢神宮がある三重県。
科学的、また学術的根拠なんてないが、今日巡った志摩半島から紀伊半島の東紀州で感じた自然には、力強い何かを感じた。
日々、目の前のことばかり見ている私は、雄大で神秘的な自然を目にすることで頭の奥深くが刺激され、スッキリとそしてクッキリと物事をとらえる視野を取り戻していく感覚を覚えた。
“自然には勝てん”
あおさ漁師さんの言葉を、思い出していた。
話は変わるが、世界最大のシェアを誇る世界的ガイドブック「ロンリープラネット」が先月、世界の旬の観光地ランキングを発表し、紀伊半島が世界第5位に格付けされた。
主に和歌山側の紀伊半島だが・・・。
では一部だが、今回巡った東側の紀伊半島はどうだろうか。
山々が迫り、急に海というリアス式の厳しい自然環境に、古代より暮らす人々。
自然に祈り、自然の恵みも怒りも、ありのままに受け止める。
自然崇拝という日本人のルーツがここにはある。
そんな気がしてならない。
そしてそれは、きらびやかな建物やアクティビティを巡る観光でなく、日本人の精神性に触れることができる、深く貴重な資源だと思う。
追記(2017.12.22)
後日、世界のVOGUEに、三重押しの記事を発見!
9 Reasons Why You Should Go to Japan’s Mie Prefecture
年末紀伊長島大港市
hp http://kihoku-kanko.com/feature/4927/
道の駅マンボウ
三重県北牟婁郡紀北町紀伊長島区東長島2410-73
tel 0597-47-5444
hp http://www.za.ztv.ne.jp/manbou/
花の窟神社
三重県熊野市有馬町上地130
hp http://hananoiwaya.com/index.html
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事