皆さんこんにちは、歴女まっしぐら、かつ食レポ出身のライター・TOSHIです!以前、取材させていただいたお寺が国宝になって、びっくりしました。
三重県津市の高田本山専修寺は、「御影堂」と「如来堂」の2棟が国宝に指定されました。三重県内で、建築物での国宝は、こちらが初めて!!すごいですね――。
そんな高田本山専修寺が、特別拝観で、なんと、一般には公開されていない建物の中で、「蓮」会席料理で参拝者をもてなして下さるというのが、「夢告」です。
「夢告」をTOSHIがルポします!よろしくお願いいたします。
|国宝の寺で会席。「夢告」とは?ちょっと緊張の前夜
ちなみに「夢告(むこく)」とは、親鸞が悩んだ末、六角堂(京都)に籠もられた折、観音様からいただいた夢のお告げです。
このお告げにより親鸞は迷いを捨て、「お浄土の教え」に出会うことができたといわれています。
蓮は高田本山専修寺のテーマだとか。蓮のオーナーも募集しているそうです。
それにしても国宝の寺で会席なんて、ちょっと緊張しちゃいますね。会席料理は時々、いただきますが、こういう機会は初めてです。
|当日。遠くから見る専修寺、近くの町並みもおすすめ
それにしても、また専修寺に行けるんですね――。うれしいです。
私はいつも、津駅の方から車で行くんですが、ちょっと遠くから見える専修寺もおすすめ。広々とした緑豊かな、ゆったりしたところに、突然、距離感が狂うぐらい、大きな屋根のお堂があるのを見るのが好きです。
今回、専修寺で国宝に指定されたうちの1つ、御影堂は、全国の現存木造建築の中でも5番目の大きさだってご存じでしたか。
近くの町並みも、すらっと通ってとてもきれいです。
|国宝の寺で会席。いきなり・・・!
さあ、ここは専修寺の「御対面所(おたいめんしょ)」です。こちらは国指定重要文化財なんですよ。大正元年まで、法主が門信徒に対面する場所だったため、こう呼ばれています。
ほどよく年月に磨かれた、金を基調にした空間に、丹頂鶴がたたずんでいます。
まあ、美しい献立書・・・。
白地に蓮のもようと「Senjuji」の文字が浮き出た紙に、鴇色(ときいろ。鴇の尾羽とつばさの色)で書かれた「夢告」の文字。巻紙は藤色に染め上げられています。
横に見えるのは格調のある屏風に琴・・・。素敵なことが起こりそうな予感がします。
妙なる音楽が流れ、香のかおりが漂います。季節は秋でした。
緑を見ながら涼しいそよ風に吹かれているのは、率直にいうと、まず最初は、本物のお姫様になれたような気分でした。照れますが。
本物、本当に素晴らしいものにだけ囲まれた、この上なく豊かなひととき。いや、それだけじゃない。なんだろう?この時はまだ分かりませんでした。
とにかく、こういう所ではまだ若い私。もっと入りにくい感じかと思ったんですが、そんなことはありませんでした。さすが三重。
資料の写真を撮っていたら、優しそうなご夫婦に話しかけられました。記事を書く予定だとお話すると、
「まあ、じゃあ、あなたこれからルンルンね」
と笑顔で言われ、思わずほっこり。
三重県人って優しいと思います。「これがあたりまえ」だと思っていると、そうではないことに時々気がつかされます。
|高田本山専修寺「夢告」、「蓮」会席のお味は!?
食前酒が運ばれてきましたよーー。「自家製果実酒」です。グラスがまた素敵。繊細で品がある感じ。
この段階で、もう帰りたくないと思った私です。
前菜です。「蓮根胡麻和え、蓮根のし焼、博多蓮根、射込み蓮根、サーモン昆布〆蓮巻、蓮根もろ味噌和え」。
あっ、おいしい!おいしいですよ!!
蓮根胡麻和え・・・私、胡麻和え(ごまあえ)で、こんなにうっとりさせられたのって初めてかもしれません。
恍惚もののクリーミーな和え衣に、しゃっきりした食感の蓮根がベストマッチ。今、思いだしてもまた食べたい一品です。
ほかも皆おいしい。私、昆布〆(こぶじめ)大好きなんですよね。博多蓮根も久しぶりに食べました。
吸物は「蓮根すり流し、蓮根餅」。こんなに美しいのに、ほっとする味。
焼物です。「鰆蓮味噌焼、蓮根たまり煮」。「鰆(さわら)蓮味噌焼」とは・・・これも凄くおいしいです。蓮根たまり煮は、しんまでムラなく真っ黒!
煮物の「蓮根飛龍頭、生姜、法蓮草、粟麩」。器も美しいです。
揚物は「蓮根替り揚」。留の「炊き込みご飯、留椀、香の物」。水菓子は「季節の果物」でした。
ごまかしが利かない、といわれる日本料理。素材を大切にした上品な味つけで、「蓮」をメインにするという制約があるにもかかわらず、この高いクオリティの味とバリエーション、至福のひと時でした。
食後には、合掌して、食後のことばを言いました。
「われ今 このうるわしき食を終わりて 心ゆたかに ちから身に満つ ごちそうさま」
|本山は廊下も広い、天井が高い!
そして、今回国宝に指定された「御影堂(みえいどう)」、「如来堂」へ。一般公開されていない場所にも入れました。
とにかく、廊下が広い、天井も高い!
あったかい時期でここにお布団ひいたら、いくらでも人が住めちゃうなっていうくらい、なんか笑っちゃうくらい廊下が広くてずっと続くんですよ。この廊下だけでも見る価値ありです。
|とてもこの世とは思えない御影堂
「御影堂」は宗祖親鸞の木像を安置、歴代上人の御影を敬置しているお堂です。畳が739枚(!)敷かれたこのお堂は極彩色と金の華麗な装飾がきわだつ、とてもこの世にあるとは思えないくらい本当に美しい、ありがたいところです。専修寺のお坊様からお話を聞きながら、中陣から、内陣の拝観もできました。
実は、この取材に私の母が同行していたのですけれど、母もこの世界に魅了されたようで、お浄土を表現しているというところを見ている時、「お母さん、お浄土からは戻ってこなあかんよ」と、考えればまずいことを言ってしまいました。
|「贅沢」とはまた違う、ひたすらに心ゆたかな時間
御対面所に戻りました。法話、箏曲、呈茶の時間です。
仏法に関するお話を、初心者でも分かりやすいようにお話して下さり、とても心が安らぎました。そして琴の演奏、お抹茶、「蓮の風」という名前のお菓子をいただきました。
琴の音色が、専修寺の鐘の音とあわさって聞こえた時、今日はなんて豊かな一日なんだろうと、涙が出そうでした。
この日に「贅沢」という言葉はふさわしくない気がします。贅沢をした日は、人間はもっと、おごった気分になるものです。
私が専修寺の「夢告」で今、いただいているのは、現実をのりきるヒントが与えられる、ひたすらに心ゆたかな時間でした。
そして「賜春館(ししゅんかん)」へ。貴賓接待のための書院で、ここが完成したころ、明治天皇行幸の「行在所(あんざいしょ)」とされることが通知され、それを祝って賜春館と命名されました。明治天皇の行幸は明治13年(1880)年に実現されました。重要文化財です。
安楽庵を見た後、山門に登らせていただくことができました。
皆さん、そして母の感動と興奮は最高潮に・・・。ここでも普段見られないところを見せていただいたのですが、真っ先に行った母の後ろ姿を忘れません。
山門の上から専修寺の境内を見て、「まるでお城だね!」と大興奮の母。非常に立派だという意味だったのでしょう。
「どこ行くよりよかったわあーー」
と言ってくれました。実は地中海クルーズも最近一緒に行ったんですけれどね。
でも本当に、こんなにありがたい、豊かな一日。母も喜んでくれてよかったです。
真宗高田派 本山 専修寺「夢告」
http://www.senjuji.or.jp/thismonth/2017/kaisekiryouri_mukoku.php
真宗高田派 本山 専修寺 「高田山・蓮の会」
http://www.senjuji.or.jp/scenery/lotus/owner/index.php
「それでも東海は世界一」と愛してやまない、ほぼ食レポ出身のライター。三重県出身だが、最近三重のよさに目ざめた。某調理師専門学校の通信生。旅と食、人間の美がライフワークです。別名は竹井夙(たけいとし・「夙」の字は「しゅく」で変換可)。https://ameblo.jp/6104163/ 得意ジャンル:食レポ、旅行関係、人間の美の追求