「おはようございます」
くぐり戸をくぐって入った場所、
そこには明るい声と暖かな空気とコーヒーの香りがあった。
小さな納屋を改造して開いたというコーヒーショップは、伊勢ののどかな風景の中にある。
知人に教えてもらい取材させてもらうことになったこのお店は、元の建物にちなんで『NaYA coffee』という。
開店と同時に入店させてもらい、窓際の席に着いた。
空が見え、雲の流れから、外の寒さがわかったが、そこからは光がたっぷり差し込み、
そしてストーブの炎でとても暖かかった。
私が席に着いてまもなく、くぐり戸が開き、にこやかにおじさんが入ってきた。
「おはようございます、いらっしゃいませ」
お店の方の声のトーンで、常連さんなのだとすぐにわかった。
私は本日のおすすめのコーヒーの『メキシコ』と欲張ってコーヒーゼリーときび糖のシフォンケーキを頂いた。
本日のコーヒー
きび糖のシフォンケーキ
「今日も海行ってたんですか?」
「今日はいってないよ」
「そうなんですか、はいどうぞ〜」
常連さんと交わされる他愛ない会話。
「やっちゃん」
と呼ばれているこの方はヤスコさん。
このお店を作った方の1人だ。
そんな声を聴きながら一口目のコーヒーを頂いた。
コーヒーに最近目覚めたばかりの私には味を語ることはできないが、好きだ。
最初の程よい苦味、スッキリした後味、こだわりのカップに口をつけた時の口あたり。好きだ。
きび糖の優しい甘さのシフォンケーキ
ゼリーに合うように深入りのコーヒーで作ったゼリー
本当にほっこり美味しくて、自然と微笑んでいたことに気づく。
取材をしにきているという事を忘れ、くつろいでいると、かかっていた音楽やコーヒーカップをソーサーに置く音、時計の針の音、豆を選別するシャカシャカとした音が心地よく響いてきた。
ぼーっとしていると
「ねーちゃん窓際に座ってると絵になるよ」
と常連さん。
ちょっとカッコつけて足を組んで浸っていた私には嬉しいお言葉。
そう、この空間ではどこを切り取っても絵になるのだ。
このお店を開いたきっかけを聞いた。
ヤスコさんの旦那さんである優樹さん
タバコをやめた事を期にコーヒーに目覚め、どんどんはまり自家焙煎してみる。
そしたら美味しくて、調子に乗ってお店をしてみようとなった。と
そして、コーヒーについて勉強して勉強して今に至ったそうだ。
豆のグレードやこだわり、仕入れや管理など丁寧にゆっくりと話して頂いた。
新鮮な豆を焙煎すると油が滲み出て来る。
優樹さんが豆の瓶を開けようとすると
「ポンっ」
と気持ちいい音が響いた。
生きて、呼吸して、ガスが発生しているのだそう。
深い。コーヒーは深い。
それを面白みと捉え、お店を開く事にされたこの方々はもっと深いのだろう。
そしてお父さんの行洋さん。
ニコッとされる顔や、気遣いが優しく、お店の雰囲気を柔らかくされている。
3人でつくりあげたお店には手作りもたくさん。
テーブルやコースターには屋号であるヤマカの焼印が。おじいちゃんが使っていたものだそう。
味のある色を出す為にオリーブオイルやワトコオイルなど色々塗って試してみたとのこと。深みのある温かみのあるテーブル。お店にしっくりと馴染む。
提供する物だけではお店は出来ない。
もちろんコーヒーやお菓子はおいしいのであるが、
なんとも言えない穏やかな雰囲気も一緒に。
開村300年の村に出来た新しい集いの場。今日もコーヒーの香りに誘われて。
『NaYA coffee』
〒515-0506 三重県伊勢市植山町 植山町74-5
nanachiro。OTONAMIE公式記者。食べる事が大好きで産直市場に通い詰め、好きな気持ちが爆発し、野菜ソムリエ資格取得。三重に産まれ三重で育った30代。出掛けること、写真を撮ること、郵便局を巡る事も好き。常にカメラを持ち歩き綺麗な風景などを見つけるとついつい寄り道。得意ジャンル:写真(風景、親子写真、夫婦写真など)・郵便局巡り(貯金してご当地スタンプをもらう)。この記者が登場する映像