気になる。
竹、気になる。
竹細工ばかりで、気になる。
店に入る。
私「あー・・・、こんちわ。」
店のおじさん「あー・・・、いらっしゃい。」
店内には、竹で編んだ鞄、籠、台所用品など、とにかく竹細工でいっぱい。そして、その一品一品がお洒落で格好良い。
私「何を作っているのですか?」
店のおじさん「丸いザル。」
私「完成するのにどれくらいかかるのですか?」
店のおじさん「編むのだけで一日かかるなぁ・・・。日当にもならんけどな。」
店のおじさん「あー、これこれ。完成したらこれになる。」
三重県津市にある阿部久すだれ店。
ザックリと店の位置を説明すると、松菱の裏の道を北に少し歩き、林時計と清観堂菓子店の交差点を右に曲がった旧伊勢街道沿いにある。
創業120年以上の歴史があり、主に竹細工をつくっている。
神社などにもすだれを納めている。また神棚用のすだれなども作っている。
三重県指定伝統工芸品。
店のおじさん「むかしはここらにも3件くらい竹細工店があったけど、うち1件だけになってもたな。今は竹細工いうても中国製ばっかりやからな。」
私「このお弁当箱カッコイイですね。昔、京都市に住んでいときにお洒落な雑貨屋で、これに似た弁当箱を見たことあるような気がします。今の若者も、きっとこういう竹細工って好きなんちゃうかなと思います。」
店のおじさん「そうなんか。京都市はみな他所からな。滋賀とか奈良とかから仕入れとる。いや、奈良からはないかな。京都でも丹後の竹細工はあるけどな。」
注文があれば竹わっぱも作ってくれるらしい。
私「やっぱり、飲食店のお客さんが多いですか?」
店のおじさん「昔はそうやったなぁ。今の子はよう使いこなさん。使いこなすような料理人がおる料亭も減ったしな。京都あたりやったら、今でもそんな料亭、多いけどな。」
私「おじさんの顔写真、撮っていいですか?」
店のおじさん「ワシみたいな爺さん撮ってもしゃあないやろ・・・。ええけど。」
おじさんは優しく笑ってくれた。
おじさんの顔に刻み込まれたシワ。
いままで、どれくらいの竹細工を作ってきたのだろうか。
何を想い、誰を想い、竹を編み続けてきたのだろう。
店内には、お孫さんらしき子どもの写真。
本 物 は 、 う つ く し い 。
阿部久すだれ店
三重県津市東丸之内19-2
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事