三重県鳥羽市の離島、自然と人情が溢れる漁村で生まれ育った菅島小学校の児童が、地元を案内してくれるツアー「島っ子ガイドフェスティバル」が今年も行われました。
「ようこそ、すがしまへ。 Welcome to Sugashima.」
バイリンガルでお出迎えです。
菅島旅館組合より伊勢エビのお味噌汁でおもてなし。風の島と呼ばれる菅島の朝は、少し肌寒く体が温まります。なんて豪華なウォーミングアップ。
はふはふと頬張りながら、4つのコースに分かれて、案内が始まります。まずは各々の自己紹介。好きな犬がティーカップトイプードルの子もいれば、好きな食べ物がサワラのたたきの子もいます。
【青コース】
灯台・しろんご浜を巡る右回り3kmコース(5.6年生)
【黄コース】
しろんご浜・灯台を巡る左回り3kmコース(5.6年生)
【緑コース】
しろんご浜・灯台に行く3km遊歩道コース(3.4年生)
【桃コース】
平坦な1kmのショートコースお楽しみ体験(1.2年生)
最初に『あみさばき』の説明がありました。「危険な魚もいます。サメ、エイ、ウツボもいます。」時折、先生が子どもたちのイントネーションを耳元で正します。青いかごの中にエイやヒトデ・・・名前不詳の生き物がたくさんいます。
「エイの尾っぽには毒があるんやで。」そう言いいながら、エイの上に乗っているカニをひょいと持ち上げて、お客さまに差し出します。と、戸惑い。
日なたで女子会中のおばあちゃん達。「やーい。やーい。」と手を振って、子どもたちの活躍を応援、お客さまを歓迎してくれます。
春の4、5月に採れるアカモクという海藻やサメをタレという干物にする『風の島加工場』を見せてもらった後、年末から春先に向けて最盛期となる『のりづくり』『ワカメ』の説明がありました。〇月頃から〇月まで、〇日間、いくつもの数字を覚えていて、すらすら言えることに感心します。『昔の松村旅館の紹介』『お父さんの仕事』『刺し網(漁)』の紹介は子どもたちの家業の説明です。ふとんを敷いたり、ごみを拾ったり、お手伝いをするそうです。
(やや)遠くから温かく見守るお父さん。網の色について質問に息子さんが困っていると、代わりに詳しく答えてくれます。さすがお父さん!頼もしい!と思ったのは息子さんだけではありません。
子どもたちとのおしゃべりに夢中になって歩いているうちに浜に着きました。他の島々や愛知県が見渡せます。『しろんご浜』は年に一度だけ海女漁が行われて、最初に採れた赤アワビと黒アワビが白鬚神社に奉納されます。島の人々にとって、神聖な場所です。ちびっこ海女さんは綺麗な貝殻を見つけるのも得意です。
森の中をぬけると、イノシシが檻にかかっていました。泳いで海を渡ってきて、お年寄りが作る畑を荒らすので、島の人々はとても頭を抱えています。
雲一つない空に白亜の灯台が映えます。『菅島灯台』は平成21年2月に「近代化産業遺産」、平成22年2月には「登録有形文化財」に登録されています。内部が一般公開されるのは年に1、2度です。「来島してくださったお客さまの思い出に。子どもたちがふるさとの灯台の全てを胸を張って案内できて、大人になってもふるさとが誇りになればいいな、と思い本日は特別に開放させていただきました。」と鳥羽海上保安部交通課の方。ヒーロー的存在です。かっこいい。
海は広いな大きいな。灯台に登れるなんて嬉しいよね。満面の笑みです。富士山も見えちゃうのではないでしょうか。
ぽーっと汽笛が聞こえます。「仲間の船がパトロールをしています。」と鳥羽海上保安部交通課のお兄さん。よく見ると船に電光掲示板がついています。ん?何か字が流れている。
双眼鏡でよくよく見ると・・・菅島っ子ガイド頑張れ の文字。かっこよ過ぎます。
「えー!?ほんま?」「双眼鏡貸して!貸して!」「ほんまや!」「すごー!」と大歓声。
最後に『菅島診療所』の説明がありました。医師が不在となって3カ月が経ちます。一日も早く以前のように子どもらが安心して暮らせますように。お待ちかねのお昼ご飯は学校でいただきます。全校生徒は23人。複式学級で助け合って学んでいます。
おかげ屋さんのお弁当が届きました。助手席の方は奥さまではなく、妹さんです。いつもは菅島小学校の給食を作っています。
お弁当 おかげ屋
http://blogs.yahoo.co.jp/shimaben73
みんなで手を合わせて大きな声で「いただきます!」お弁当はアカモク・タチウオ・タコの天ぷら、サワラの塩焼き、サザエ・トコブシの煮物、アラメの巻物、ところてん等々。お味は言うまでもなく、なんてバランスの良い食材。適度な運動に加えて、寿命が伸びた気がします。お年寄りが元気なのも納得です。「それ、オスやで。」伊勢エビのお味噌汁から突き出た脚で雄雌の見分け方を教えてくれました。
子どもたちはお弁当を持参です。ラブリー&アーティスティック。
子どもたちが育てたさつまいもが焼き芋と大学芋になって、振る舞われました。
僕たちは美しい方に物怖じをしません。(かと言って、積極的な男性になる必要はありません。)
お客さまから焼き芋が包んであったアルミホイルでお花の折り方を教えてもらいます。せめてものお礼です。子どもらは大事そうに鞄にしまいます。
小学校の屋上も校長先生のはからいで開放されて、子どもたちは大はしゃぎです。お客さまも童心に返ります。家族のように仲良くなった頃、刻一刻とお別れの時間が迫ってきます。
最初に出会った船着き場で終わりの会です。子どもたちより心がこもったお土産が手渡されて、思わず涙ぐむお客さまも。
さよならは笑顔でします。また会える日を信じて。体に気を付けて元気でね。
船が出港し、突然、走り出す子どもたち。防波堤の先まで全速力で船を追いかけます。
船が見えなくなるまで、何度も何度も「さようならー。さようならー。」と叫んで、手を振ります。心が洗われた素敵な一日をありがとう。
カメ。Otona記者。岐阜県で育ち、愛知県で働き、三重県の離島に嫁ぎました。来年の春で2歳になる男女の双子の母、三重県魚食リーダー候補生。主に県産水産物の美味しさや地域の情報を伝えられたらと思います。潮風による肌や髪の劣化が悩み。この記者が登場する記事