ホーム 04【知る】 ここは『セカイノオワリ』なんかじゃなくて『セカイノオワセ』なんだ!

ここは『セカイノオワリ』なんかじゃなくて『セカイノオワセ』なんだ!

近年、自治体や企業が、まちおこしや自社PRのためにYouTubeを使ったPR動画を作成し公開するという手法をとることが多くなりました。

後述することでもありますが、現行において最も爆発的な影響力のあるメディアは未だテレビであり、そしてテレビCMもが持つ力も未だ絶大です。
しかしその一方で、テレビCMは一時的な反響が大きいメリットはあるものの、テレビ局から買い取る『CM枠』が高額だったり、しかも1回のテレビCMでは15秒、もしくは30秒という時間の制限もあります。

それよりは初期投資である制作費にお金をかけ、時間制限の自由なYouTubeで公開しよう、という流れができあがっているように思います。
しかし、数多ある自治体のまちおこし動画や企業の自社PR動画の中から、頭ひとつ抜けて話題になる、コストをかけただけのリターン、反響がある、ということはなかなか難しいことのように思います。

数あるPR動画の群れに埋もれてしまわないようにする方法…

それぞれがその為の工夫を凝らしているように思います。

 

さて、先日、三重県は尾鷲市にある『尾鷲物産株式会社』が製作した自社PR動画が『まるでミュージックビデオのよう』とSNSを中心に話題となりました。

まずはそのPR動画の『予告編』をどうぞ。

 

 

ご覧いただけましたでしょうか?
動画のタイトルは『セカイノオワセ』。
なにやら有名なロックバンドを彷彿とさせるこのワード。
略してしまうと『セカオワ』、某有名バンドの略称と全く同じですね。

 

この動画制作を請け負ったのは、東京のデザイン会社『DRAWING & MANUAL』。
大河ドラマなどのオープニング映像の製作などでも知られています。

『世界の尾鷲』=『セカイノオワセ』、略して『セカオワ』、というワードの“発見”から、この動画の全てのアイデアがスタートしているように思います。

では、『本編』をどうぞ。20分以上もある大作です。

 

 

ストーリーや込められたメッセージの細かい解説は、筆者がここで説明するまでもありません。
友達との青春と、やがて選択しなければならない自分の将来と未来について、そして自分の住む地元への葛藤……誰しも若い頃に経験する悩みについて描かれています。

動画製作を依頼した、尾鷲物産の小野社長にお話を伺ったところ、主人公が高校生なのは、この動画を若者、とりわけ地元(尾鷲)に住む若者に見てもらいたいから、という思いがあるそうです。

そして、地元の人ほど、尾鷲という環境、尾鷲物産という会社について先入観だけでイメージしていることもあり、

「実は世界を相手に闘っている企業、日本中から注目されるほど幅広い事業を展開している企業であることを知ってもらいたい」

とのことでした。
筆者は、この動画の製作現場にお邪魔して見学させていただきました。

 

エキストラは尾鷲物産の社員さんや尾鷲高校の生徒さんなど、地元の方々

 

何度も何度も演奏シーンの撮影が行われました。 改めてこの動画をじっくりと観てみたのですが、主人公の男の子、キレイな顔をしてて、某バンドのボーカルさんに似てますね。 そしてキーボードを担当するのが女の子なのも某バンドからだと思います。

 

この画像では確認しづらいですが、DJを担当する男の子が頭に被っているのは天狗のお面。(某バンドのほうはピエロの被りもの) ちなみに、尾鷲には『天狗倉山』(てんぐらさん)という山があります。 天狗のお面にはそういう意味があるだと思います。 そんなふうに元ネタを探していくのも楽しいですね。

 

製作を請け負った『DRAWING & MANUAL』のディレクターさんにお話を伺ったところ、当初はテレビCM用の動画を、ということだったらしいのですが、自由度の高いYouTubeでの動画製作に切り替えたそうで、ストーリー性のある脚本や演出はいわずもがな、オリジナルの楽曲から作るという意気込みで望んだそうです。

『DRAWING & MANUAL』のみなさんは、この『セカイノオワセ』というコンセプトが必ず話題になることを見越し、あとは丁寧な現場作業とオリジナリティを積み重ねていったのだと思います。
(お邪魔した撮影現場は尾鷲の魚市場にて音楽を演奏するという、この動画の一番の盛り上がりシーンの撮影でした。始まったのはまだ夕方でしたが、終了した時にはもう日付が替わっていました)

 

そしてその結果、この『セカイノオワセ』のムービーは、SNSで話題となり、やがて名古屋系列のテレビ局の番組内で取り上げられました。

そのことが反響を呼び、既に会社のほうにも「働きたい」という内容の問い合わせが相次いでいるそうです。
冒頭に書いた通り、近年ではYouTubeを使ったPR動画の製作が盛んになりました。

しかし、『PR動画を作った』だけではPRという本来の目的が達成されません。
『PR動画がちゃんと見てもらえる』ような話題作りが必要です。

つまり、『PR動画のPR』が必要になってきているのです。

 

『セカイノオワセ』の動画は、SNSなどで『まるでミュージックビデオのよう』と、いち企業のPR動画らしからぬクォリティが話題になりましたが、それよりまず『セカイノオワセ』というユーモアのあるワードが話題を先行し、それに次いでそのクォリティが話題になったのではないかと思います。

やがてそのウィットに富んだユーモアがテレビ局の目に留まり、テレビでも取り上げられることになったのだと思います。

必ず話題になるような動画作りをする……それはなかなか難しいことだと思います。
動画制作や動画の公開がたやすくなった時代だからこそ、内輪ウケや面白ろネタのみに頼らない、アイデアとモノツクリが必要とされているのだと思います。

 

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