ホーム 01【食べに行く】 三重が誇る最高級の岩がき。その漁師を訪ねてみた。@鳥羽市畔蛸

三重が誇る最高級の岩がき。その漁師を訪ねてみた。@鳥羽市畔蛸

三重県には夏に食される最高級の岩牡蠣があるのをご存じでしょうか?
この牡蠣は東京などの都市部の料亭や割烹でも使われている最高級品として多くの人の舌を魅了している。

恵まれた環境で育つ三重の岩牡蠣

三重県鳥羽市畔蛸。その岩牡蠣はここで育っている。

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大胆且つストレートなメッセージのグラフィティーアートがお出迎え。

伊勢神宮の森から伊勢志摩国立公園を経て、ここ的矢湾に通じる。この手つかずの広葉樹林から流れ出る栄養分の多くはこの的矢湾に集められ、豊富なプランクトンに恵まれている。

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この恵まれた海で最高の岩牡蠣を育てる親子を訪ねた。的矢湾あだこ岩がき共同組合、北川聡さんと息子の二一さん。根っからの漁師家系でこの海で育ち共に生活しているお二人。
丁度、養殖筏の様子を見に行くとのことで、厚かましくも一緒に乗船させていただいた。

的矢湾あだこ岩がき共同組合 北川聡さん。突然の訪問にも快くお話を聞かせてくれた。とても気さくで時折下ネタを交えた話がとても面白い。
的矢湾あだこ岩がき共同組合 北川聡さん。突然の訪問にも快くお話を聞かせてくれた。とても気さくで時折下ネタを交えた話がとても面白い。

 

岩牡蠣養殖の成功の鍵は“地元漁師の経験と勘”があった

もともと的矢湾では真牡蠣の養殖が盛んであった。しかしある日、養殖場に行くと岩牡蠣が付着してた。“もしかしたら岩牡蠣も養殖できるのではないか?”と考えたのが始まりだった。

“冬が旬の真牡蠣と合わせ、一年を通して牡蠣を出荷することができる。”と考え、1998年に北川さんを含めた5名で岩牡蠣養殖の研究が始まった。

牡蠣養殖で最も重要なのは採苗という種付け作業。約0.3ミリの種牡蠣をホタテの貝殻に付着させる。すでに岩牡蠣の養殖に成功している隠岐の島などへも足を運んだが、そこには壮大な設備を必要とする人工採苗という方式だった。

「そんな設備がなくても、ワシらにはこの海がある。」
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“この海で岩牡蠣作ったるわ!”決意が固まった。そして人工ではなく、自然の海の中でホタテの貝殻に種牡蠣を付着させる天然採苗の研究に励んだ。潮の流れや季節、水温変化など、長年培った漁師の知恵と勘だけを頼りに・・・。

北川二一さん。わざわざ牡蠣棚を引き上げて見せてくれた。
北川二一さん。わざわざ牡蠣棚を引き上げて見せてくれた。
ホタテの貝殻に付着した岩牡蠣の赤ちゃん。ここから出荷までは約3年かかる。

「今は安定して獲れてるけど、最初の2〜3年は全くあかんだわ。みんながそれぞれ思いつく限りの方法を試して、毎週報告会をして地道にデータを集めていったんやでっ!」と北川さんは熱く語る。

そして2004年、およそ6年の年月を重ね、ようやく「天然採苗」による岩牡蠣養殖の技術を確立。この海と共に生きてきた漁師たちの意地とプライドが実った瞬間であった。

 

色分けされたブランドタグに込められた想い

あだこの岩牡蠣にはいろんな色のタグが付いている。越前蟹にも見られるようなブランドタグだ。
IMGP8493 copy「他のブランド牡蠣では名前や産地を帯び紙で巻いてあったりしているが、うちらの岩牡蠣は殻にドリルで穴を開けてタグを差し込むんや。これやったら殻を開けてもタグは付いたままや。お客さんに覚えてもらえるやろ。あだこの牡蠣は旨い!ってな」日焼けした北川さんの顔は、自信に満ち溢れていた。

一つ一つドリルで穴を開け、ゴルフのマーカーのようなブランドタグを付けていく。
一つ一つドリルで穴を開け、ゴルフのマーカーのようなブランドタグを付けていく。

4色のタグの意味は漁師によって色分けされている。これは実際に食べるお客様まで畔蛸のどの漁師が育てた岩牡蠣かを知ってもらうためだ。

IMGP8490 copy的矢湾あだこ岩牡蠣組合では安全面への取組みも徹底している。一般的な紫外線殺菌海水による浄化に加え、真水浸透圧処理も行なっている。タグの意味はブランド訴求だけでなく、食べる人への安心感をも配慮しているのだろう。

 

牡蠣は子供みたいなもん。喜ぶ場所に連れてったるんや!

北川さんにとって、畔蛸の岩牡蠣とは何なのか聞いてみた。

「養殖って言っても、ワシらの養殖は別に人工的に餌をやったりしとる訳じゃない。自然の海で天然採苗させて自然に育てとるから、結局は天然物と一緒なんさ。その上、身も太っていて当たり外れがない。この海を知り尽くした漁師は牡蠣が一番喜びそうな場所に吊るすだけ。あとはこの豊かな海が美味しい牡蠣を育ててくれるんや。ワシらにとって牡蠣は子供みたいなもん。喜ぶ場所に連れてったるんや。」北川さんはとても嬉しそうに語った。

魚つき保安林からの眺め、山側から湾外への潮の流れがはっきりと見えた。この潮の途中にたくさんの岩牡蠣を吊るした筏が並んでいる。
魚つき保安林からの眺め。山側から湾外への潮の流れがはっきりと見えた。この潮の途中にたくさんの岩牡蠣を吊るした筏が並んでいる。

「豊かな海って言っても資源は限られとる。息子や孫、その先もずっとこの牡蠣を守って行って欲しいから、乱獲をして水揚げ量を上げる気はない。もっと旨い牡蠣をこだわって育てていきたいな。あと、牡蠣の本場フランスにも畔蛸の岩牡蠣をアピールしたいな。日本にも旨い牡蠣はあるぞー!!って。とりあえず伝えたいな。」

伊勢神宮林から伊勢志摩国立公園を抜け広がる的矢湾と、その海を知り尽くした男たちが生み出す「あだこの岩がき」。
私自身この牡蠣の魅力に出会ったのは、三重県ではなく東京にある日本料理店だった。実はこれまで生牡蠣はあまり得意ではなかった。しかし、この牡蠣を食べてからは、夏の楽しみが一つ増えた。生牡蠣が「海のミルク」と呼ばれる意味を理解できたことを憶えている。

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あだこの岩牡蠣の旬は5月〜7月。まだギリギリ間に合います。
三重が誇る「海のミルク」をご賞味あれ!!


的矢湾あだこ岩がき協同組合

住所:三重県鳥羽市畔蛸町164-1
TEL::0599-33-7888


 

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