伊勢志摩サミットで話題を集めた三重酒。その中でもひときわ注目を浴びたのが「純米大吟醸 半蔵 山田錦 磨き40」がワーキングディナーの乾杯酒に選ばれた大田酒造さん。
サミット翌日には注文が殺到して1年分が完売状態とのニュースが出てさらに話題に…。
身近な伊賀の酒蔵があっという間に全国区になり、ドキドキする中、伊賀市上之庄にある大田酒造さんを訪ねました。
「も~びっくりよ~」と言いつつ、いつもと変わらぬマイペースな笑顔で出迎えてくれたのは大田酒造の5代目女将・大田智洋さん。同蔵元の専務であり、宣伝部長。普段からメディア対応、営業活動に国内外を慌ただしく動き回っていますが、サミット後は忙しさに拍車がかかり、あちこちでこのポーズをとる姿を目にしたのではないでしょうか!?
「これは撮影用の空瓶!」と嬉しそうにサミット酒の空瓶を見せてくださいました。いつも一生懸命・・・どこか面白い方です。
さて、そんな大田酒造さんをご紹介します。
1892年創業。蔵元が杜氏を兼任するケースが増えるなか、創業時からずっと雇い杜氏で酒造りを続けている酒蔵です。現在の杜氏はベテラン南部杜氏、藤井久光さん。藤井杜氏を中心に数名の蔵人で手仕込みしています。
造り真っ只中の冬場に蔵に潜入させてもらいました・・・自分で言うのもなんですが、なかなか見られない作業風景を撮影させてもらっております。どうぞご覧ください!
洗米は文字通り酒米を洗い糠を落とす作業です。寒い蔵の中で冷たい水を使って丁寧に手洗い。その後、お米に水を含ませる「浸漬」作業。適正な水分量になるように秒単位で時間を計測して、浸けたりあげたり…。ピンと張りつめた空気に満ちていました。
こちらも貴重な麹室内の作業風景。蒸した酒米に麹菌を振りかけ、米を丹念にほぐして菌を繁殖させていきます。
大きなホーローの仕込みタンクの中では醪(もろみ)がフツフツと発酵。この醪をしぼってお酒ができるわけです。しぼられたお酒は瓶詰され、これまた手作業でラベルや掛け紙、紐などを結んできれいにお化粧されて出荷されます。
1本のお酒が蔵を旅立つまでには、たくさんの人の手がかかっているんですね。
そんな同蔵の代表銘柄は忍者の里らしさあふれる「半蔵」と、伊賀市の鳥・白鷺を含めた「東海白鷺」。純米酒から吟醸酒、リキュール類と幅広いラインナップが特徴で、「半蔵」だけでもその数、20種類以上。
中でも珍しいのは、伊賀で唯一の木桶で仕込むお酒「純米酒 半蔵 木桶仕込み」。
近年は温度、品質管理のしやすいホーローやステンレスのタンクで仕込むのが一般的ですが…同蔵元では昭和10~40年頃まで使用していた木桶を修復。
2005年から、こちらの木桶を復活させて少量のお酒を仕込んでいます。
木桶はホーローやステンレスに比べて管理がむつかしく、手のかかるお酒。ですが、木桶仕込み特有のやわらかな口当たり、深い旨味とコクを併せもった酒に仕上がるため、知る人ぞ知る人気商品。シンプルな純米酒は木桶の特徴を感じさせ、穏やかな気持ちで飲みすすめられます。本当に少量生産なので、どこかで出会えたらぜひお試しを!
最後に、筆者の趣味でマニアック比較です。
中央(③番)が今回サミット乾杯酒に選ばれた「半蔵」の「純米大吟醸 山田錦 磨き40」というお酒。一緒に写っているのはどれも同じ山田錦を使ったお酒で精米歩合違いなどの「姉妹酒」たち。これに加えて大吟醸クラスには「雫酒」もあり…
何が言いたいかというと本当にいろいろあるんです。
創業から変わらずじっくりと醸しながら、ニーズに合わせて少しずつラインナップを増やしてきた大田酒造さんのお酒。いろいろ飲み比べて自分好みの「半蔵」を見つけてみてください。
大田酒造
住所:伊賀市上之庄1365-1
TEL:0595-21-4709
URL:http://www.hanzo-sake.com/
kanzaki chiharu。OTONAMIE公式記者。伊賀市在住のフリーライター。出身地、広島のタウン誌→東京の編集プロダクション→フリーランスとして独立して早20年。現在は伊賀に拠点を持ち、伊賀の情報誌の執筆をはじめ、企業広告コピー、イベント企画提案などを手掛ける。日本酒好きが高じて、「伊賀酒DE女子会」の企画運営をはじめ、日本酒関連の執筆、コーディネート、イベント運営も行う酔っぱライター。得意ジャンルは日本酒、伊賀情報。2016年「日本酒女子普及委員会」会長に就任。https://ameblo.jp/iganonihonsyudaisuki/