「負けるとしたらこういう負け方」と伊賀の金鐘達(キム・ジョンダル)監督は唇をかんだ。
10月24日(土)、秋晴れの真っ青な空の下行われた伊賀FCくノ一 vs スペランツァFC大阪高槻の下位リーグ第3節。伊賀は、5人のディフェンダーでゴールを閉じる大阪高槻を最後まで崩すことができず、0-1で敗れた。
最下位に沈み、背水の陣で臨む高槻は、試合開始直後から闘志むき出しで伊賀に襲いかかってきた。伊賀のディフェンダーがボールを持つと、高槻のFW丸山桂里奈、右サイドの成宮唯が猛然とプレッシャーをかける。下位リーグに入り、2試合連続無失点と安定したディフェンスを見せてきた伊賀だが、この日は高槻の圧力に受け身となり、らしくないミスが目立った。
前半12分、センターサークル付近でボールを奪った成宮がそのままドリブルで独走し、GK久野吹雪と1対1に。決定的なピンチを迎えるも、シュートはわずかに枠外に逸れ、事なきを得る。
伊賀は杉田亜未や櫨まどかがドリブルでしかけチャンスをつくるが、いずれも単発に終わり、流れを引き寄せるには至らない。
高槻ペースで迎えた35分、2011年ドイツW杯優勝メンバーの丸山が、伊賀DFにプレッシャーをかけボールをかっさらうと、GKの位置を確認し、狙いすましてシュート。伊賀は自らのミスで、苦しい展開を強いられる。
怒濤の攻撃も、高槻の壁破れず
1点を追いかける伊賀は、後半攻撃的な選手を次々と投入。FWに俊足の園村奈菜を据え、「相手(DF)の裏のスペースを使い、5バックのギャップを突こう」(金監督)と試みる。DFの那須麻衣子らが前線へロングボールを入れて高槻のハイプレスを回避すると、徐々に流れは伊賀に傾いていく。
前半は成宮のケアに追われた左SBの畑中美友香も、後半は積極的に攻撃に参加。左SHのマレアナ・シムとの連携で、左サイドから崩しにかかる。
しかし前節の湯郷戦でロスタイムに失点し勝利を逃した高槻は、最後まで集中力が切れない。
終了間際、シムがトラップでDFをかわしゴールに迫るも、身体を張った高槻DFを最後までこじ開けられなかった。
際立つシムのプロ意識
何度となく決定的なチャンスをつくり、伊賀の攻撃を引っ張ったシム。後半35分、左サイドからゴール前に鋭く蹴り込んだクロスも、味方FWが触れば一点というボールだった。ボールが逆サイドに流れていくのを見送ったシムは、「アーー」と大声で叫び、悔しさをあらわにした。
「あのクロスボールは悪くはなかったが、やや高く、ゴールに結びつけることができなかった。私はプロであり、ゴールを取るプレーを期待されている。今日はチャンスを多く作ることはできたが、勝つことはできなかった。言い訳はしません。プロとしてさらに良いプレーができると自分自身に期待しています」
U-23アメリカ代表の経験を持つシムは、何度も「professional」という言葉を使い、自らを鼓舞するように試合を振り返った。
翌25日に行われたASエルフェン埼玉vs岡山湯郷Belle戦が1-1の引き分けに終わったため、下位リーグは勝ち点2差に4チームがひきめく大混戦となった。
シムが合流してまだ2週間。左サイドでの出場はこの試合が初めて。確かに連携面での課題はある。しかし彼女が見せたプロフェッショナルな姿勢とプレーは、苦しい戦いの中、伊賀を残留に導く原動力になるはずだ。
【試合結果】
2015プレナスなでしこリーグ エキサイティングシリーズ下位リーグ 第3節
伊賀FCくノ一 0-1 (前半0-1) スペランツァFC大阪高槻
【得点】35分 丸山 桂里奈
公式記録
【下位リーグ順位表】
順位 | チーム名 | 勝点 | 試合数 | 勝 | 分 | 負 | 得点 | 失点 | 得失点 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
1 | 湯郷ベル | 9 | 3 | 0 | 3 | 0 | 3 | 3 | 0 |
2 | 伊賀FC | 9 | 3 | 1 | 1 | 1 | 1 | 1 | 0 |
3 | 大阪高槻 | 7 | 3 | 1 | 1 | 1 | 5 | 5 | 0 |
4 | AS埼玉 | 7 | 3 | 1 | 1 | 1 | 4 | 4 | 0 |
【今後のスケジュール】
2015プレナスなでしこリーグ エキサイティングシリーズ下位リーグ 第5節
対戦カード:伊賀FCくノ一 vs 岡山湯郷Belle
開催日時:11月3日(火・祝) 13:00K.O.
場所:上野運動公園競技場
詳細については、伊賀FCくノ一サイトをご覧ください。 http://www.igafc.jp
akubi。OTONAMIE公式記者。
スポーツライター・カメラマンとして、なでしこリーグの伊賀FCくノ一の取材をしています。三重の皆さん、ぜひ伊賀FCくノ一を応援してください!
得意ジャンル:サッカー(特に女子サッカー)、フットサル、スポーツ
デザイン、アート。