正午を過ぎた12時30分頃。「よかったー!残ってて」。津市久居東鷹跡町にある小さな惣菜屋の店内では、そんな客の声がする。
昔ながらの町の惣菜屋という佇まいのフードショップヒライは、最近Instagramでも独特の世界観で人気だ。
営業時間は11時から16時だが売り切れ次第終了することもあり、14時頃には閉店することもあるという人気ぶり。仕込みは朝4時から始まり、営業日には10種類以上の惣菜や弁当などが店に並び、200〜300パックがすぐに売り切れる。どこか懐かしい、しっかりとしたおふくろの味が人気の秘訣だ。
ヒライは60〜70年前に鶏肉屋「ヒライ食肉店」として開業。その後、魚のお造りがメインのスーパーとなり今の惣菜屋になった。「10年くらい前の、ばあちゃんのレシピで今も惣菜を作っているんです」。
インスタライブを終え、そう教えてくれたのは多田良平さん。ご存知の方も多いかと思うが、彼は三重を撮る写真家「ふがまるちゃん」だ。
Twitterでは1.3万人のフォロワーを持つ人気者でもある。
店を切り盛りするのは調理担当の叔母、販売や調理補助担当の母、パック詰めやSNS担当のふがまるちゃん。
スイーツ担当はふがまるちゃんの妹、他にもパートさん。店内は家族経営ならではの温かな雰囲気。
ふがまるちゃんにカメラを始めたきっかけを聞くと、意外なキャリアの持ち主だった。久居で生まれ育ち、名古屋のITベンチャー企業でプログラマーとして勤める。後に東京のIT企業で働いていたときに、江ノ島の美しさに惚れてカメラをはじめ藤沢市に移住。7年前に帰省し、今はヒライ、カメラマン、プログラマーとして仕事をしながら写真集も発行している。
ふがまるちゃん:海や川が好きでカメラを持って休みの日は過ごしていました。三重に帰ってきて、鳥羽展望台から眺める海がめっちゃきれいで。それから三重の自然を撮るようになりました。
店内には所狭しと飾られている、ふがまるちゃんが撮影した写真。
ふがまるちゃん:最初はレジ横に少しだけ撮った写真を飾っていたんです。そしたらお客さんから「あの場所も撮って欲しい」とリクエストが増えてきて。鬼ヶ城の写真を飾れば熊野出身のお客さんから「懐かしい。子どものころによく行った」と喜んでくれたんです。熊野の青の洞窟の写真を観たお客さんが、この写真がきっかけで実際に行ったそうです。感想を聞いたら「イタリアの青の洞窟と同じやったわ」と。「もう結城神社の梅が咲いている時季かー」など、そんな感じでお客さんとの会話の種にもなるので楽しいです。
趣味で始めた写真は観光三重のフォトコンテストなどでグランプリを獲得するなど評判になり、地元の文化芸術の創造拠点アルスプラザやイオンショッピングモールで個展も開催。
店内の写真を眺めているとひとりのお客さんが入ってきた。「最後のフルーツサンドありますか?」聞けばさっきのインスタライブを観て、慌てて来店されたという。
ふがまるちゃん:毎日「インスタを観た」というお客さんがきてくれたり、時々、母も登場して高評価だったり。ありがたいです。
そんなふがまるちゃんに聞いてみた。久居ってどんな町ですか?
ふがまるちゃん:町があって少し行けば榊原温泉もあります。なんというか、令和なのに平成な感じがします。何年も変わっていない、背伸びしていない感じで、のんびりしていて居心地がいいです。
パックからオカズがはみ出し、愛情を感じるお弁当を手に久居の町を少しだけ歩いてみた。
商店街には八百屋や靴屋など昔ながらの専門店や古民家も残っている。
小路には小さなスナック街。
観光地でもオフィス街でもないこの町には暮らしの温度が醸す、少しレトロな日常が強調され、輝いて目に映った。
フードショップヒライ
津市久居東鷹跡町9
Instagram https://www.instagram.com/foodshop.hirai/
Twitter https://twitter.com/hirai_super
三重を撮る写真家ふがまるちゃん
Instagram https://www.instagram.com/mie_eetoko/
Twitter https://twitter.com/fugaemon
三重のええとこ巡り https://mie-eetoko.com/
三重フォトギャラリー https://photo.mie-eetoko.com/
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事