ホーム 02【遊びに行く】 山や海が枯れている…当たり前の幸せを未来につなぐために。「おかげさまダイニングプロジェクト」

山や海が枯れている…当たり前の幸せを未来につなぐために。「おかげさまダイニングプロジェクト」

前日の天気予報で、雨を心配していたのが嘘のような気持ちの良い夏晴れの日。

2022年8月7日(日)、地元の名店シェフや生産者が集う「食」のイベント「おかげさまマルシェ」が行われていました。

ザ・オランジェガーデン五十鈴川

会場は伊勢市の「ザ・オランジェガーデン五十鈴川(以下、オランジェ)」。五十鈴川駅の改札口を出てスグ、結婚式や祝い事をはじめ、人が集う場所です。

地元の名店による地域食材を使用した逸品メニュー
江川さんの一志SPポークのパテドカンパーニュ、谷口さんのメロンとスペイン産生ハム、土実樹さん青ミカンのスカッシュ
オランジェカフェウッド マルシェ限定 『南伊勢の青みかんのかき氷』
建物内の会場の様子
生産者の商品直売コーナー
南伊勢アサヒ農園のハウスみかん
自然派住宅「バウハウス」さんの廃材木材無料配布・ステンシルアート体験コーナー
みえの木箱に三重の自然で取れた植物で装飾する「森の標本箱」作り

イベントを覗いてみると、ご家族連れをはじめ、たくさんの人たちがお食事を楽しんだり、木と触れ合うワークショップに参加したり。また、駆けつけた地元の生産者たちと交流をしています。

直売所で購入した食材や商品をエコバックに詰め込む来場者の姿を横目に、今晩の食卓に並ぶ献立は何かな?と想像を膨らませてしまいます。

おかげさまダイニングプロジェクト始動

おかげさまマルシェは、2022年に立ち上がった「おかげさまダイニングプロジェクト」の第1弾としての取り組みです。

おかげさまマルシェでは、伊勢出身の「伊勢創作ビストロ mirepoix(以下、ミルポワ)」オーナーシェフ岡田新太朗さんと、地元の名店による地域食材を使用した逸品の提供。環境と体にやさしい食をはじめ、ワークショップ体験など、子どもから大人まで楽しめるイベントとなり、おかげさまプロジェクトとして良いスタートダッシュを切りました。

「おかげさまダイニング」プロジェクトとは

私たちが美味しい食事ができるのはなぜでしょうか?それは、料理をつくる料理人のおかげ。

料理人が良い料理をつくることができるのはなぜか?それは、良い食材のおかげ。

良い食材を仕入れることができるのはなぜか?それは、食材をつくる生産者のおかげ。

生産者が良い食材をつくることができるのはなぜか?それは、山・海・川…豊かな自然環境のおかげ。

シェフは、自分が料理できるのは生産者のおかげだと語り、生産者は、食材を作ることができるのはこの自然のおかげだと語りました。

生産者が語った、“今”。

「山が枯れている。このままではこの食材はここで作れなくなる・・・。」

そのような言葉をきっかけに、私たちがおいしい食事をいただける当たり前の幸せを、これから先の未来まで守り続けていきたいという想いから発足したのが「おかげさまダイニング」プロジェクトです。

参照:The ORANGER GARDEN ISUZUGAWA 公式WEBページ 一部抜粋

生産者の元へ訪れ、未来へ「食」をつなげるための行動へ。

左 オランジェ株式会社 久保社長/右 伊勢創作ビストロ mirepoix 岡田シェフ

ー山が枯れている。養分が足らず海や川も枯れてきている。

海や川や畑など、遠く離れた様々なフィールドの生産者さんから、共通した言葉を受け取っていた岡田シェフ。

ー岡田シェフ「料理人として、生産者がいないとどんなに腕を磨いたとしても美味しい料理は作れません。官で自然を戻す前に、まずは民間で戻すことができないだろうか?という想いがプロジェクトのきっかけなんです。」

コロナの影響で結婚式の開催がストップ。オランジェとして、アフターコロナを見据えて施設をどのように伝えていくのか?という課題に直面した久保社長。オランジェには会場と運営サポートを任せられるスタッフたちがいる。そこで久保社長は地域を巡り、レストランの方たちとお会いして「一緒に何かイベントをしませんか?」と話を伺ったそうです。

すると、地域の名店シェフたちは「俺たちはいいから、生産者たちをクローズアップしてほしい。」と口を揃えて言いました。実は岡田シェフと久保社長は高校時代の先輩後輩の関係というご縁が重なり、実際に生産者の元へと久保社長はオランジェスタッフと共に足を運びました。

ー久保社長「山が枯れているから、良い養分が川に流れないから、海まで枯れている。誰も知らない。僕たちも知らなかった。料理人、生産者、自然を守らないと僕たちは美味しい料理を食べ続けることができない。それなら、岡田シェフと何かイベントやろうって。食を未来に残す、それを全面的に打ち出すイベントをまずしようと。」

共通の想いを持つ者が集えば、一歩ずつ育む未来。「当たり前を作っていくこと。」

ー岡田シェフ「おかげさまマルシェの後、コンセプトを共にする生産者さんや企業さんなど、ヒト同士が交流できる場を作っています。色んな方と交流する中で、新たに前へ進む考え方が生まれたら嬉しいかなって。」

「 豚捨の伊勢牛と一志SPポーク丼」はマルシェ限定で特別販売されました。

岡田シェフとのご縁で、会場に駆けつけていた「まるとも荒木田商店」の元ソフトバンクホークス江川智晃さん。一志SPポークをはじめ、畜産の現場ではコロナや戦争の影響でエサ代が高騰。事業をたたんでいく生産者も目の当たりにし、もっとSDGsの観点から自分たちにできることがないかと試行錯誤していると話します。

ー江川さん「さっき米農家の宇野さんと余った堆肥を使えないかって話をしていました。この後の交流会で、またそういう話もできたらと思ってます。」

江川さんの一志SPポークのパテドカンパーニュ

ー岡田シェフ「プロの集団じゃないですか。チームワークがすごくて、堆肥の話であったり生産者同士が暇な時期に手伝いあったり。そういう話がどんどん広がっていて、人としての循環も生まれていったらと思っています。」

自然に対する関心や共通した考えを持っているからこそ、連携の話も生まれやすい。おかげさまダイニングプロジェクトだからこそ踏み出す一歩があります。

ー岡田シェフ「当たり前を作っていくっていうのが、世の中で大切なのかな。」

例えば、伊勢の旬といえば伊勢海老は、頭をつけて一匹まるまる料理で提供するのが三重県の主流です。しかし、伊勢海老の頭は食べられず、結果としてフードロスになってしまいます。皿に乗るのは伊勢海老の身のみにして頭の部分はソースにするということを、当たり前にしていけたらと岡田シェフは話します。

ー岡田シェフ「そのためには発信して見せなきゃいけないし、活動していかなきゃいけないかな。僕はそれを意識しながらやってますね。」

マルシェのテイクアウトドリンク資材で使われたTHEEARTHCREWの「トウモロコシ由来のPLAカップ」と「コーヒー豆から作られた生分解ストロー」。99%土に還る、環境に優しい製品。

「おかげさまダイニングのロゴ」に込められた想い

ザ・オランジェガーデン五十鈴川の企画・デザイン 奥野さん

おかげさまダイニングのロゴはオランジェの奥野さんがデザインされました。

ー奥野さん「人と人や体験。何でもいいんですけど、異なる出会いが新しい気持ちの種が埋められて、それがより近づいていくことで葉っぱになって。いつか実になって。このプロジェクトが進んでいた時に何か結果が残せるように、という思いを込めました。」

もともと、岡田シェフやおかげさまプロジェクトの立役者 株式会社伊勢萬の浮田さんとの出会いがなければ、環境に意識を向けて物事を見ることはなかったと話す奥野さん。

岡田シェフと生産者の元を訪れて感じた、このままでは食材が食べられなくなってしまうところまで来ているという実感が、ひとつの「種」に。「おかげさまマルシェ」の開催で、ひとつ、またひとつ「種」が生まれたことで、これから幾重にも重なる「葉」、そして大きな「果実」が育まれていく可能性を秘めています。

おかげさまダイニングプロジェクトでは今後、地域食材を使用したディナーイベントや、生産地巡りツアーなどを企画して、森づくりにも寄与する活動を行う予定をされています。

次回は9月19日(月・祝)にマルシェを開催予定です。最新情報はおかげさまダイニング公式SNSをフォロー、チェックください。

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