「お伊勢参り」や「おかげまいり」という言葉はよく聞くけれど、子どもの頃からこんなに伊勢に観光客来てたっけな。
コロナ禍になって、市内に県外ナンバーを見る事がほぼなくなって、少し感染の拡大が落ち着くと県外ナンバーがまた増え・・と、ここ最近の伊勢市内はそんな状況。
じゃあ、もっと昔のお伊勢参りはというと・・
今から約400年前の江戸時代、当時の日本の人口は約3000万人と言われている。そして当時の江戸の人口は約100万人。(これは当時のロンドンやパリより多かったという。)
戦乱の世が落ち着いた江戸時代は、庶民の生活も少しづつ豊かになり『一生に一度はお伊勢さんへ』と、約60年に一度のペースで「おかげ参り」が大流行!
宝永時代には2ヶ月の間に約350万人。文政時代には半年で約500万人の人が伊勢に訪れたそう。(江戸の人口の約5倍・・一時的に江戸より多いなんてことがあったんでしょうか)
そんな人たちのおもてなしをする為、食をはじめ多くの物資が荷揚げされていた場所、河崎。「伊勢の台所」と呼ばれていました。
当時の江戸の人口よりも多い観光客・・その人たちが飲んで食べて、お土産として持ち帰るモノの量はすごかったでしょうね。入れても入れてもはけていくのが想像できます。笑
当時の物流は海が主流だったから、関西や三河のほうから船で来て、そのまま荷揚げできた河崎という場所はとても便利で栄えていったそう。
伊勢神宮にお参りする人たちもたくさん通った場所かと思いきや、そのたくさんの人をもてなす伊勢の人の街というほうが近いそう。
ネットやテレビ、印刷技術もまだ普及してない時代、人がたくさん集まることで、新しい情報や文化も多く集う場所。というのがここ伊勢河崎だったそうーー。
冒頭にこの話を聞かせていただき、わくわくが止まらなくなった私。自分の住んでいる場所の歴史を知るって楽しい!
そもそも、河崎ってまちあるきを推してるのは知ってる。でも何がすごいんやろ。
伊勢河崎商人館も、どこにあるのかも知ってる。けど、何する場所なんやろ。
そんな風に思っていたら何度かお邪魔する機会があり、もっと河崎のこと、商人館のこと知りたいな~と思い、今回は伊勢河崎商人館で西山清美さんにお話を聞かせていただきました。
伊勢河崎商人館の建物は2001年に国の登録有形文化財に登録され、2002年に伊勢市が土地を買収し、修復修繕を行い伊勢河崎商人館として開館。
今年、ちょうど20周年にあたるそうです。
もともとは江戸時代から続く酒問屋、小川酒店が営まれていた場所。蔵7棟、町家2棟などのべ600坪もあるとても立派なお屋敷。道を挟んである蔵3棟は酒類の商品蔵だった場所。
今はカフェコーナーと、雑貨や食品を中心とした販売と展示を行っています。
商人館の中に足を踏み入れると、おばあちゃん家の雰囲気(イメージです。)のような、なんかほっとする懐かしい感じ。
順路にそって最初に洋室を見学、次になかなか急な箱階段を上がって二階に進むと、畳の和室が3部屋ありました。
中でも一際目を引いたのが、通りに面した窓についている出格子。
上の方は本数が少なくなっているので光を取り入れやすくなっており、下の方は外から見上げられても室内の様子がわからないようにと、工夫されています。
ここからだと、蔵にのっている鬼瓦や、隅蓋と言われる飾り瓦がよく見え、向かいの蔵の奥の勢田川も少し見えます。昔は、船が入ってくる様子もここから確認されてたのかな〜。と、想像が膨らみます。
そしてこの2階の和室に初めて見る床の間が。
柱がないの、わかりますか?
よく見学にこられる方に「柱を切ったんですか?」と聞かれるそうですが、元々このような作りになっているんだそう。
床の間として使う時は柱があると見立て、掛け軸をかけて長板を置いてお花をしつらえるそう。その時と場合に応じて部屋の役割を変えることができるようになってたんですね。
下に降り、奥に進むとそこには八畳もあるお茶室が。
ここの茶室は京都裏千家今日庵の咄々斎(とつとつさい)を写して、明治後半〜大正の頃に建てられた。
欄間や天井、襖の引手も同じように作ってあるそうです。それを作れる財力だけでなく、この小川家に信用もあったからできたと教えていただきました。さすが江戸時代から続く商家なので、その時々の当主さんの趣味や好きなものが反映されています。
ここの茶室から見える中庭の景色も良いんです!
縁側に座ってほっこりしながら、季節の移ろいを感じられそう。
台所と居間の間の通り土間に平均台のような仕掛けが。
昼間は人の往来も多い土間だけど、夜になって家族だけになると渡り廊下を出して出来上がったご飯を運ぶ時にわざわざ草履を履かなくていいようにだそう。なるほど!
その時、ここで暮らしていた人たちの風景が、タイムスリップしたように見えてきます。
そして土間を抜け、そのまま奥の方にでていくと・・
蔵に囲まれた圧巻の景色!
黒と白のコントラストがハッキリとしてカッコいい!
奥の蔵は、昔はアワビの粕漬けなど商品の製造場所だったそうで、今は日本最古の紙幣の展示や、イベントスペースとして使えるようになっています。
先ほどお茶を嗜んだ当主さんの話を書きましたが、明治時代の当主さんはここで、サイダーを作り始めたそう。
明治42年~昭和50年初期まで作っていたそうで、その時のサイダーの濾過施設後や検査室の後も見られます。
実はこのサイダー、今も復刻版として河崎商人館で楽しむことができます。
当時と同じような原材料を使い、爽やかな酸味とすっきりとした甘みを再現。ラベルや瓶も発売当時のデザインにこだわって作っているそう!
名前を「エスサイダー」というのですが、その呼び名の由来は・・ぜひ商人館に足を運んで、答えをみつけてくださいね。
きっと最先端の流行のものに敏感だったんでしょう、大正13年におしゃれな応接室をと作ったのが、事務所のすぐ横にある応接間。
暖炉もあり、大正時代の和洋折衷のスタイルを垣間見ることができます。(順路的には最初にここを見ます)
他にもたくさん、蔵のことや、瓦の意匠のことも教えていただきましたので、長くなるのでこの続きはまた今度お伝えしたいと思います。
少しの知識をもってからまちあるきに行くと、視点が変わり、感度が上がり、楽しさが倍増すること間違いなし!
河崎まちあるきの前は、「伊勢河崎商人館」へ。
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伊勢河崎商人館(NPO法人伊勢河崎まちづくり衆)
HPはこちら→http://www.isekawasaki.jp
住 所/ 〒516-0009 三重県伊勢市河崎2丁目25番32号
電話番号/ 0596-22-4810
開館時間/ 午前9時30分
閉館時間/ 午後5時00分
休館日/ 毎週火曜日(祝祭日の場合は翌日休館)
入館料/ 大人350円 大学生・高校生200円 中学生・小学生100円
伊勢のストリートミュージシャンogurockの嫁。という事で肖像権はほぼないようなもの。見知らぬ方からの声かけにも慣れました。家業かつお節屋『小久保商店』の嫁としても活動中。お出汁をもっとたくさん広げたい! 5月から、松阪市にて『カブクノニカイ』はじめます。得意ジャンル:グルメ、伊勢市、料理、コーヒー