2月上旬。日中通してかなり寒い日が続き、厚着が必要になっている。
気温より海水温が上回っていき、海に手を入れていたほうが温かく感じる。
この時期に海水浴やサーフィン、磯遊びなどをする人はほとんど見かけない。
夏になると自然に海のイメージが湧いてくるが、普段仕事などで海に関わっている人ではない限り、冬に海を自然と想像することはあまりないだろう。
海に触れる機会が、冬にはガクッと落ちるのだ。
しかし冬の今の時期だからこその光景もある。
そんな冬の海を感じることが出来る「浜歩き」を行ってきた。
場所は南伊勢町阿曾浦にある「しじらみ浜」。
しじらみ浜は、旧南部小学校跡の後ろにある山を越え、その先に広がる浜。
辿り着くまでに山を昇り降りしなければならない結構大変な場所だ。
石で区切られた段々の斜面は、昔の人がここを畑として使っていた跡だそう。
折り返し地点からは下りになり、波の音が聞こえてくるようになる。
浜歩きはビーチコーミングと呼ばれ、冬の寒い時期や、海や水が苦手な子供でも気軽に海と触れ合い、遊ぶことができるレジャーとして親子連れにも人気だ。
浜には、海から流れてくる漂着物が沢山落ちている。
それらを観察したり、拾って集めたりして楽しむ。
同じ場所でも季節によって様々な発見があるのがこのビーチコーミングの楽しいところ。
冬のしじらみ浜はどんな様子だろうか。
しじらみ浜に到着してまず目に入るのがこの足跡。
浜を歩いた動物の足跡だ。
丸い跡とY字の形をした跡が集まっている。
鷺などの足が細い鳥類の足跡にも見える。
ここに何かあったのだろう。
そんなことを考えていたら足跡のすぐ近くに魚の骨を発見!
長い背骨でおそらく鱧のような魚だったのだろう。
冬は浜に来る人は少なくなる。
この時期には山から動物がやってきて、流れ着いたご馳走を探しているのかもしれない。
浜には貝殻が沢山落ちている。
巻貝から二枚貝の一部、甲殻類の殻まで様々。
時間が経つにつれて貝の光沢が失われていくので、目を凝らさないと見つけにくくなっている。
そんな沢山の貝殻の中に目立つものを発見。
これはムラサキウニの死骸。
まだ小さいですが、トゲが付いている状態で流れ着いている。
まだ色が残っているので最近のようだ。
ウニのトゲと同じ様に、二枚貝も殻が分かれずにくっついている状態で残っている。
ウニの真ん中に穴が開き、付いていた口がハッキリと確認できる。
ウニの口は提灯のような形から、「アリストテレスの提灯(ランタン)」と呼ばれる。
普段は観察できない物も、海岸に打ちあがったからこそ観察できるのだ。
この日は多くのウニが打ちあがっていた。
どれも小さいサイズがほとんど。
普段見られない物を見つけられるので、子供も大人も夢中になれる。
冬は生き物が腐敗せずにそのままの姿で打ちあがっていることが多いので、海に入らなくても実際に触って観察できる良い機会になる。
浜をゆっくり歩くだけで、海と自然を感じることができた。
帰り道。山を下って行くにつれて、広い浜だったのが漁村に変わっていく。
夏は勿論、桜の咲く頃や木々が木の実をつける頃にもう一度来たら、きっと違う発見ができるだろう。
いろいろな浜で誰でも手軽に海を感じられるので、是非試して頂きたい。
南伊勢町地域おこし協力隊 漁村インストラクター 神奈川県横浜市出身。東京の専門学校で幾つかの漁業を経験した後、インターンシップで訪れた三重県南伊勢町の漁場の豊かさやリアス海岸に魅力され移住。 生物全般が好き過ぎて、マダイ養殖のエサやりをしながら様々な生き物を観察。生態をもとに生き方の過程などを想像して、毎日楽しんでいる(noteにその様子を綴っています)。特に気になった生き物は、飼育や標本作製もする。