ホーム 02【遊びに行く】 02音楽 孤高のミュージシャン、キャプテンブルースのお話。

孤高のミュージシャン、キャプテンブルースのお話。

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気分転換に新しい事を始めようと、今年の春に買ったカメラを持って訪れた津市。23号線をいつもよりちょっとだけ北上しながら夏が一段落したこの日の白塚漁港は、僕が常日頃からイメージしているそのまんまの色をしていました。

水面に漂う千切れた魚と、普段からそれを食べていて、特に不自由もしてなさそうな野良猫と、その猫が残した小魚の頭部をくすねにくる鳥の類。だいたいカモメ、カラス。そんな小動物たちに見向きもせず、釣り糸を垂らす猫背の人間たちが交差する、どんよりとした灰色の昼下がり。ちょっと雨が降ってきた。

そんな混沌とした景色の片隅、この濁色の漁師町で生まれ育った1人のミュージシャンがいました。

キャプテンブルース。
出会ってかれこれ5年くらい経つのだけれど、のんびり気質のミュージシャンが多いこの三重県において、珍しく尖った気質の、ギラついた目を持つミュージシャン。見た目はぶっきらぼうだけど、中身もしっかりぶっきらぼう。なんとなく周りに誰も寄せ付けない雰囲気は曰く「俺の身体から何か変なやつが出てんねん」だそうで。その何か変なやつの分泌を止める気はあまりないんだろうなと思ってしまうあたり、今この瞬間にもしっかり分泌されてるからなんだろうな。

だから、素直に言うと、絡みにくいミュージシャンです。
あんまり笑わないし進んで交流を深めようとしてくるタイプでもない。1人舞台に立って、自分の生き様を吐き捨て、そこにある空気をブン殴るかの様に表現するスタイルは、まさに孤高。

だから、素直に言うと、僕は彼の音楽が好きです。ここ三重県で一人、闘う音楽を紡いでいるミュージシャンだと思う。

多分、3年ほど前だったか。鳥羽で開催したイベントに出ていた際、ステージ袖から観ていた彼のステージが忘れられないんです。最近ぽい言い方をすると”ゾーンに入っている”状態のパフォーマンスでした。ギター片手にラップ調の攻め気味な楽曲で客席を煽り倒し、客席を確かに踊らせる。牧歌的なレパートリーを持つ演者が多かった中だったからこそ、そのGrooveが余計に際立つ。役目が一段落し昼から夕方へ行こうとしている西に傾いた太陽が、キャプテンブルースのポテンシャルをまじまじと叩きつけられ、より一層、落日へ向かう焦燥感を増したように思いました。その時もやっぱり無口で絡み辛かったけど。

そんなキャプテンから、去年の12月、アルバム作りの依頼を貰いました。お互いコロナ禍でライブも減り、僕は僕でステージが無い分、今までしてこなかった新しい事をしてみようと、録音の勉強を始めた折でした。まだ修行の身ですが、自身の練習を兼ねて依頼を受けました。

2021年、元日。13時すぎ。正月の昼下がり、僕とキャプテンブルース。おっさん2人の二人三脚がとても静かにスタートしました。

毎月1、2回のペースでうちに来てもらい毎回1曲ずつ録って行く作業を繰り返す事10数回。気がつけば、お盆が過ぎていました。

不思議なもんで、体内から何かを分泌してくるらしい、あれだけ絡みづらいと思っていたおっさんと淡々と作業をしていくのが、なんだか心地よくなっている自分がいました。録音は慣れない作業だったので、時にミスをして謝ることもあったし、良いマイキングで良いテイクが録れたら一緒に喜んだりしました。

無口なミュージシャンは、だんだんよく喋るようになってきました。時に一人でウケて笑ってる時もありました。僕は僕で、その孤高のプレイヤーが、どんな音を録りたいのか、作りたいのかを引き出す事に注力し続けました。今思えば、それが勉強したかった事だったんだと思います。

作業をしている中で、いろんな事を聞きました。キャプテンの家族の話や昔話、苦労した話。実力を確かめるべく家を売り払ったお金で単身東京へ勝負に出て腕を磨く折、とあるミュージシャンのパフォーマンスに打ちのめされ、再び三重に戻った話。しかし三重に戻ってからも仕事帰りにホームセンターの駐車場の片隅に車を止めて、車内で黙々とギターの練習をしていた話。ボクシングが好きで練習してたら膝を痛めた話。お互い痔になった話。いろんな話を聞いて、いろんな話をしました。

それはきっと。やっぱり夢が諦められなかった、どうしようもないくらい泥臭い、一人の男の話でした。

僕にとって、この時間は音楽を作るにあたって、とてつもなく大事な時間でした。苦労人として生きてきた彼の昔話は、歌詞を増幅させて、楽曲の持つそれぞれの世界感に確かなコントラストを与えてくれました。キャプテンが吐き出す、世の中に対するフックの効いた問いかけでもあり、愚直な自分自身への懺悔の様な楽曲を只管ノートに書き留め続けたのであろう、その写実的な言葉をギターにのせて静かに吐き出す咆哮を黙々と受け止め続けた2021年の前半戦。

9月に一連の作業が終了した時、僕の前にいた男からは、”何か変なやつ”は一切出ていませんでした。人を寄せ付けず、絡みにくいミュージシャンではなく、ただ単純に、1本のギターと、書きなぐった歌詞と、音楽に向き合い続けた結果、なんとなく人との距離感の取り方がわからなくなって本当はみんなと仲良くしたいんだけど、どことなく小っ恥ずかしさが先行して周囲と馴染めず今まできてしまった一人のシャイな中年ミュージシャンが全力で投げる熱量満点の球を黙々と捕球するキャッチャーの役割をしていた僕。

多分、本当に多分だけど、いい歳こいたおっさん2人の”バッテリー”が出来上がってました。

むしろ、そうなれていたと思いたい。


孤高のミュージシャン、キャプテンブルース。僕が思うに、彼は音楽が好きで好きでしょうがなかった、永遠のギター少年。

津にこんな人がいるのかという事実を、よろしければ是非知って欲しくて今回、またしてもオチの無い稚拙な乱文を書き殴ってやろうと思った次第です。コロナコロナと耳にタコができるほど、この呪文にすっかり滅入るさこん、もう暫くの我慢である事を祈りつつ、また皆さんが心置きなく生の音楽を楽しめる時がもうすぐ戻ってくるはずです。その際はぜひ、特に、津近郊にお住まいの方はキャプテンブルースという名を覚えておいてください。津の人じゃなくても勿論。北勢の人も南勢の人も伊賀の人も県外の人も。そして、どこかのお店でライブをすると聞きつけた際には、一度そのパフォーマンスを確かめにいってみてください。僕は、オススメいたします。
その際は、今年一緒に作ったキャプテンブルースのアルバム、ぜひご試聴ください!

そして、この半年間、うちのスタジオでしか顔を合わさなかったけれど、今度会う時はライブハウスの舞台袖で会いましょう。その時はライバルだ。

◆キャプテンブルース◆
《instagram》
https://www.instagram.com/bluuues/

【参考動画】

「confusion」

「40歳の愛してる」

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