ホーム 00秋 秋が来たら「まつさか香肌イレブン」の峰々へ。

秋が来たら「まつさか香肌イレブン」の峰々へ。

今年も、秋が来たらやりたいことがある。それは、松阪市西部の峰々から選ばれた11座、まつさか香肌イレブンに登ること。昨年は、白猪山、烏岳、高見山の3座に登った。中でも高見山は、登山初心者の私が、秋冬のうちに3度登るほど、ハマった山だ。

奈良県と三重県境に位置する高見山は、標高1249m、登山家の間では「近畿のマッターホルン」と呼ばれているほど、秀麗な山容を誇っている。ガイドをお願いした山の達人に「あわよくば、雲海が見たいんです!」と無謀な相談をした。「じゃ、あそこのコンビニに午前3時に集合な」

 

ヘッドライトに導かれ、暗闇の高見山に挑むことに。

午前3時出発。登山初心者の私が、達人のヘッドライトに導かれ、暗闇の高見山に挑む。視界に制限があると耳が敏感になるようで、何か音がすると「まさか熊?!」とビクビクしながら進んだ。山頂に着くころには、自分の荒い呼吸音しか聞こえないくらい息が上がっていたけれど…なんとか登頂!山頂は明るくなっていたが、深い霧に包まれ視界が悪く、雲海どころでは無かった。強風の山頂は10月なのにとんでもなく寒い!山小屋でコーヒーをごちそうになったら、そそくさと下山。高見ブルーと言われる高見の青空も拝めなかったが、なんだかとても気分が良かった。

山頂の山小屋で、コーヒーを頂く。
山頂付近は霧が発生。幻想的だった。

それが1度目。2度目は12月、とにかく霧氷を見てみたかった。「あんまり天気は良くないみたいですけど、明日は高見に登ります!」そう達人に連絡したところ、「低気圧来とるから、気ぃつけて」…大丈夫か、私。

 

山は天気が重要と、思い知ることになる。

案の定、高見は笑ってしまうくらい吹雪いていて、あたり一面真っ白な雪の世界を、鼻水をたらしながらなんとか進んだ。山頂で撮った写真には、顔はビシャビシャ、髪の毛はボサボサのまま凍っている私の姿が。残念ながら、霧氷と言うよりはただ単に、木に雪が積もって見えるだけといった感じだった。猛吹雪の山頂では、小屋に避難して震えながらカップラーメンを食べた。凍えた体を溶かしてくれるその味は格別!山頂でカップラーメンを食べるために、山に登るのもいいなと思った。

天気の悪い中、付き合ってくれた夫。
超絶おいしい!山頂のカップラーメン!

年が明けて1月中旬、3度目はなんとしても高見ブルーに映える霧氷が見てみたい!そんな想いで、仕事も休んだ、天気も直前まで確認した、お願いしますっ!

 

3度目の正直、高見ブルーと霧氷のトンネル。

前回は松阪市側の登山口、舟戸ルートから登頂したが、今回は奈良県側の杉谷ルートからスタート。船戸ルートは松阪市指定文化財の五輪塔や、中央に南無阿弥陀仏と刻まれた、高さ2.2m、幅2.3mの両部曼荼羅という自然石をみることができる。個人的には舟戸ルートが好きだが、今回杉谷ルートを選んだのは、霧氷のついた木々のトンネルをくぐるためだ。吹雪の2度目とは違って、風もなく木漏れ日が心地良い。「こんないい天気は珍しい、あんたら今日はラッキーや」と関西からの登山客。時折おしゃべりしながら山頂を目指していると、「霧氷、綺麗でしたよ、もう少しですよ」と下山する人々が声をかけてくれる。がぜん足取りも早くなる。

そしてついに、高見ブルーに映える霧氷のトンネルが!太陽を浴びてキラキラと輝いている。なぜだか脳内にアナ雪の歌が流れてきてしまう。3度目の正直でようやく見ることのできた絶景だった。

風の強い山頂では、「エビの尻尾」と言われる霧氷が形成されていた。木などに付着した雪や水滴が、風上に向かって羽毛状に成長し、エビの尻尾のように見える。天気が良いので登山客も多く、ソーシャルディスタンスを考えて今回は山小屋には入らなかった。何より、目の前の絶景にテンションが上がり、山小屋で休まなくても良いくらい疲れを感じていなかった。感動をカメラに収めたらホクホクとした気分で下山。自宅から車で1時間足らずだが、近場の山で体験したとは思えないような非日常体験だった。例えると、初めて大型の野外フェスに参戦した時の感覚に近いような。その興奮は何日も続き、忘れられない1日になった。

 

地元住民の山岳信仰、まつさか香肌イレブンの峰々。

まつさか香肌イレブンの峰々は、山頂に神社がある山が多いらしい。高見山であれば八咫烏を祀る高角神社が鎮座し、地域住民からは首から上の病気が治ると信仰されている。昨年登った白猪山にも、石尊大権現が祀られていた。なんと毎年白猪山では、山頂付近で投げ餅もするのだとか。(新型コロナウイルスの拡大により、現在は中止されているとのこと)

古くから山は、日本人の心の故郷であり、山を崇拝し、山に育まれて生きてきた。そういえば、ガイドをしてくれた山の達人は、落ちているゴミを拾っては、背負っているザックをゴミでいっぱいにし、登山道を進んでいた。先人達が残してくれたこの山。安易に汚してはならない、失くしてはならない、この峰々は私たち日本人のパワーマウンテンなのだ。そう思うと、登る時の気持ちも変わってくる。

私のような初心者から、山好きの上級者まで楽しめる、まつさか香肌イレブンの峰々。次はどの山に登ろう。

 

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