ご紹介するのは三重県伊勢市朝熊町出身の北園克衛。戦前戦後を生きたモダニズム詩人の代表的な人物であり、今でも詩人やデザイナーなどから人気がある。そんな洒脱なコスモポリタンだった北園克衛の育った郷里とはどんな場所なのか。
今年開催される北園克衛没後43年の「43北園忌」について取材した。
展示が行われているのは、伊勢市河崎にある中谷武司協会(以下・協会)。
今回の事業が行われることになった発端は、昨年度伊勢市が行ったクリエイターズワーケーション。
伊勢に訪れた詩人・松田朋春さんと地元デザイナーの中谷武司さん・協会のプロデューサーの橋本ゆきさんが知り合ったことにある。そして橋本さんの曾祖母は克衛の姉にあたるのだそうだ。
協会では最初の詩集「白のアルバム」が展示されている他、現在手に入る詩集の販売も行っている。北園克衛は詩人であり、写真家であり、デザイナーでもあった。 石や丸めた新聞紙などを使った写真集の展示はされていないが、特別に見せていただいた。
独特な北園克衛の詩。
詩にうとい私は、その一文をどう捉えていいのか分からない。
文脈を読み解くのではなく、絵画を眺めているような感覚で向き合うと一人のアーティストが持つ世界感に触れたような気がした。
単語たちが積み上げる空間を遊んでいるような感覚。
詩を読み慣れていないので、どうしても本だと早く読むクセがある。
だたこの本は、ナイフとフォークを持ってゆっくりと味を噛みしめるように読みたいと思った。
そしてそれは本でなくてもいいな、とも思う。
AR詩が体験できる、北園克衛が生まれ育った朝熊町に向かった。
詩のある非日常
朝熊町は市街地から車で約15分、神宮神田のある楠部、一宇田を抜けた先にあり伊勢の最東端に位置する。朝熊岳登山口があり、週末は多くの登山客が訪れるも、普段は趣きある古い家が残る、静かで自然豊かな場所。朝熊町出身・在住の橋本さんにご案内いただきスマホを持ってAR詩散策を行った。
treadrawというアプリ(iPhoneのみ対応)を使い、朝熊町に設置された数カ所のスポットをスマホでかざせば、北園克衛の詩などが飛び出す「AR詩by ni_ka@朝熊町まちなか」(詩人ni_kaについてはこちら)。
まずはテストも兼ねて近鉄朝熊駅からスタート。
近鉄朝熊駅
「青い卵のなかに消えてしまう おまえ の ありもしない ガラス の顎 の星ように」
屋外でAR詩を読むという体験は、ゆっくりとスマホで文字を追い、言葉の絵画に出会う感覚。次はお堂にて。
お堂
「円錐曲線をはづせ。すると純白のカンガルウが螢色の眼鏡を静かにかけ、水晶のパラシウトに乗つてビヤホオルのかなたに消えてしまふ。」
レトロな町並みと前衛的で抽象的な詩との出会い。不思議な世界感でたのしく、次を探しに。道を進み曲がり角で出会った詩。
曲がり角
「なんだか世界が ペパァミント の重い 直線ばかりになつて しまい ガラスのように 幻影の夜を散らばつていく ぼく」
このような感じで、他にも北園克衛のAR詩が点在するスポットを巡る。
新緑がきれいだったので登山口まで散策。
1075体の仏像があるお堂や、
レトロなタイルなど、徒歩でなくては見えない景色。
日常の風景のなかで詩を愉しむ、非日常のアート体験でした。
北園克衛の命日である6月6日は、美術手帳の総編集長や詩人とのオンライン茶話会や、オンラインパフォーマンスも開催されます。
Katsue Kitasono
43北園忌
北園忌実行委員会(本部 中谷武司協会)
伊勢市河崎2丁目4−4
hp https://katsue.jp/
fb https://www.facebook.com/43%E5%8C%97%E5%9C%92%E5%BF%8C-107968708025885/
村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事