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地方でアートに親しみ、カルチャーが育つギャラリーを―いなべ市・阿下喜商店街「岩田商店ギャラリー」の挑戦

地方と都会の文化格差。都会であれば容易に触れられる芸術や文化が、地方だとなかなか触れられない現状があります。

インターネットが普及した現代、自分からアクセスしようと思えば、興味・関心のあるものを見ることのできる社会になりました。

しかし、暮らす町に芸術や文化と気軽に出会える場所があり、幼少期から親しんでいるのと、親しんでいないのとでは、文化的な部分の成長に大きな差が表れてしまいます。

ローカルな場所でもアートやカルチャーに触れられる「文化発信基地」を作りたい。そんな思いを胸に、いなべ市北勢町の「阿下喜商店街」のなかでアートギャラリーが営まれています。

いなべのアート・カルチャー発信基地「岩田商店ギャラリー」

三岐鉄道北勢線「阿下喜駅」から徒歩3分ほどの阿下喜商店街のなかにアートギャラリーショップ「岩田商店ギャラリー」はあります。

「岩田商店ギャラリー」は、昭和の雰囲気かおる街並みの中、かつて、岩田商店の屋号で商いをしていた、2階建ての空き家を、2017年に改装。展示を行う「ギャラリースペース」と、展示いただいた方の作品やグッズなどを扱う「ショップスペース」として現在活用しています。

ホワイトキューブの展示スペースはもちろん、昭和の雰囲気漂う昔ながらの空間も各所に残っており、独特の展示空間を楽しめる空間。

展示される作品は、いなべ市の方のものもいれば、県外のアーティストを呼んできて企画展が開かれることもあるそう。

企画展などのギャラリーとしての面に加えて、アートショップとしての側面も兼ね備えており、これまでに展示されてきた作家さんの作品を購入することもできます。

また、地域で生産されているお茶や「八風農園」の野菜を購入することができるのも、地域に根差した「岩田商店ギャラリー」ならではといったところです。

この「岩田商店ギャラリー」は、どのような人たちによって運営されているのでしょうか。

営んでいるのは、「松風カンパニー」さん。

「岩田商店ギャラリー」を営んでいるのは、「株式会社松風カンパニー」。

「株式会社松風カンパニー」は、「八風農園」、「上木食堂(古民家を改装した食堂)」、「フライベッカーサヤ(ドイツパン屋)」、「nord(ノール/フランス料理屋)」、「岩田商店ギャラリー」の、5つの事業形態で成り立っています。

そのため、「岩田商店ギャラリー」でも「八風農園」の野菜が販売されていたのですね。

「株式会社松風カンパニー」は、彼らが感じるいなべ暮らしの楽しさや豊かさ、そして彩りある時間や空間を届けられるように、仲間たちで協力して、活動をされています。

いなべ市のアーティストや高校生の表現の展示の場にも

彫刻家 はしもとみお展示風景(写真:ウラタタカヒデ)

「岩田商店ギャラリー」のあるいなべ市には、彫刻家や画家、陶芸家、写真家など、いなべを拠点に活躍するアーティストや作家さんが、たくさんいるそう。

「岩田商店ギャラリー」は、その方たちの近しい表現の場であると同時に、、幅広い年齢層の地域のつくり手の皆さんが生み出す「もの」の価値をさらに高めることのできる「場所」でありたいと思っているそうです。

実際、北勢町阿下喜に工房を構える80代の木工職人の方が作ったお盆を、上木食堂のランチプレートとして使用し、岩田商店で合わせて展示販売することで、お盆が地域の新たなブランド品となり、県外からもお客さんが買い求めにきたんだとか。

地域の方々と表現の場でありながら、その価値をさらに高めて行ける場所として、「株式会社松風カンパニー」の運営する一つ一つが相互作用していることがわかりますね。

いなべ総合学園高等学校 美術部展2018「ROCKETS」展示風景

また、「岩田商店ギャラリー」は、地元の高校生たちと一緒にアート空間を作ることもしています。

いなべ市唯一の高校である、いなべ総合学園高等学校の美術部の部展を行い、高校生たちと話をするなかで、自由に表現ができる場の必要性について気づくきっかけにもなったそうです。

高校生たちにとっても、自分たちの作品を地域で発信して、さまざまな人たちに見てもらえる機会は、有意義ですよね。

そんななか、「岩田商店ギャラリー」を手掛ける「株式会社松風カンパニー」は、「岩田商店ギャラリー」の可能性を広げるべく、新しいチャレンジをスタートさせました。

「岩田商店ギャラリー」の改修工事と建物のメンテナンスを実施するためのクラウドファンディング

「株式会社松風カンパニー」は、「岩田商店ギャラリー」の改修工事と建物のメンテナンスを実施するためのクラウドファンディングを3月5日まで行っています。

支援を通して行いたいのは、二階を中心とした手付かずとなっているスペースを展示スペースとする改修工事と一部1階や建物のメンテナンスです。

これまでもギャラリーの改修工事は、業者に入ってもらいながらも、可能な限り、自分たちの手で行ってきたそう。

しかし、時間や人手、経済的な面で自分たちで行うことが難しくなってきたこと。また、古い建物であることから、この場所でギャラリーを続けていくことや、今以上の展示スペースを広げるに当たっても、プロの手による補修や補強が必要となってきたことから、今回のクラウドファンディングを決断しました。

ローカルで地域の人がアートに触れ、地元の人や中高生が自分たちの表現をする場をもっと広げられる。三重にある先行事例として、もっと取り組みが強化されるチャンス、ぜひ応援したいものです。

 

岩田商店ギャラリー 小寺 貴也さんインタビュー

「岩田商店ギャラリー」にお邪魔して、スタッフの小寺貴也さんに、今回のクラウドファンディングへの想いを伺いました。

―今日はよろしくお願いします。普段から地域の人や県外の人が「岩田商店ギャラリー」に来ますか。

小寺さん:地域の方も最初はギャラリーに馴染みがないようで、恐る恐る覗きに来る感じでした。でも、一回来てもらってからは、興味のある展示のときに、遊びにきてくれます。

「上木食堂」や「nord」に来た、いなべ市外の方や愛知、岐阜の方も遊びに来てくれるので、地域の人に限らず、いろんなところから見に来てもらっていますね。

―地域外の方が阿下喜でアートを楽しむ様子があるんですね。

小寺さん:県外の作家さんが展示をすることも多いので、ファンの方が来てくれます。あとは上木食堂自体に県外のお客さんが多いので、そこから来てくれることも多いです。

この「岩田商店ギャラリー」の立ち上げ自体が、ローカルの地で、外のカルチャーやいなべの作家さんの作品を見れる場所にしたいと始まったところも大きいと思います。

改装予定の2階スペース

―クラウドファンディングは、そういった表現の場を広げていきたい思いの表れかと思います。「岩田商店ギャラリー」に、展示をお願いするために作品を持ち込む方も多いと聞きました。それを展示するスペースを作るために、改装したいというところもあるのでしょうか。

小寺さん:これまで1階は企画展が中心で、すべての人の持ち込みをOKとすることが難しかったんです。でも、持ち込みの方も来てくれるし、展示の募集をかけると地域の方から集まってくる。だから、需要を強く感じたんですよね。

―一方で、いなべ総合学園の美術部とも連携をされてますよね。学生の子たちが、こういったギャラリーで展示をするのは、彼らにとって、とても有意義だと感じます。

小寺さん:部展も2回やってもらいました。部員の子たちからも自由に好きな作品が作れると好評みたいです。

改装予定の2階スペース

―今回のクラウドファンディングは、単に資金を募るだけでなく、「岩田商店ギャラリー」の認知を上げるための活動でもあると伺いました。その点も詳しく教えてください。

小寺さん:この場所が、地域の人たちにどれだけ必要とされているか、一種の選挙、投票の意味も込めてクラウドファンディングをやってみるのもいいんじゃないかと。

「岩田商店ギャラリー」は、地域に向けてカルチャーを発信する立ち位置を担っています。地域の人を含め、さまざまな人とこの場所を一緒に作っていくという意味合いでも、支援をしてもらってやっていく形を取るのがいいのではないかという話になりました。

―地域の方に「岩田商店ギャラリー」の認知が広まって、子どもから高齢者の方までアートやカルチャーを楽しめる場所になっていくといいですね。

小寺さん:僕が作家活動をしているときに、、愛知や名古屋だとイベントで出店して物を売ることをやっている高校生の子を見かけます。なんでできるのかなと考えたときに、圧倒的に都会の方が、カルチャーに生で触れられて、「こういうことができるんだ」と体感できるチャンスが多いんですね。

僕もいなべ市が地元なんですが、小さいときにこういう岩田商店みたいな場所があったらよかったよねと話をするんです。高校生の子たちも阿下喜駅から帰るときに、この店の前を通って、たまに立ち寄ってくれる子もいて。もっと気軽に入れる場所になっていけばと思います。

―なかなか日本にギャラリー自体が少なく、アートに馴染みが少ないなかで、ローカルから芸術に触れられる場所は貴重ですね。

小寺さん:2階のスペースを展示場所にできれば、見る展示も増えて、「岩田商店ギャラリー」を通じて、さらにつながりや発見が生まれます。今以上に「岩田商店ギャラリー」がこの場所にある意味が活性化されて、強くなっていけばいいなと思いますね。

―クラウドファンディングを通して、「岩田商店ギャラリー」がさらに魅力的な場所になっていくことが楽しみです。ありがとうございました!

植物をテーマに開催した企画展「PLANTS」いなべ市在住の作家さんをはじめ、県内外多くの作家さんが参加

「岩田商店ギャラリー」の小寺さんのお話、いかがでしたでしょうか。

地方の一つの場所で生まれたギャラリーが、多くの人たちの想いが引き出され、新たな種を生み、新しいつながりを生んでいく場所へとなっています。

今回のクラウドファンディングを通して、より多くの地域の方の作品が展示されるようになれば、いなべ市の素敵な表現者と出会える可能性も広がります。

地域発信で出会いの場を広げようとする「株式会社松風カンパニー」の「岩田商店ギャラリー」へのクラウドファンディングは、こちらから寄付ができるようになっています。

ぜひ一度ご覧になって、共感された方は支援者となって、ともに「岩田商店ギャラリー」を盛り上げていきましょう!

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