ホーム 01【食べに行く】 港町にあるコレクターというバーが哲学的?自己流で妄想「妄道」を極めよう! in 尾鷲

港町にあるコレクターというバーが哲学的?自己流で妄想「妄道」を極めよう! in 尾鷲

港町尾鷲市に、風変わりなバーがある。津市に暮らす私は4年程前に一度いった。
久々に前泊で尾鷲に泊まることになったので、行く事にした。

相変わらず、店の前のディスプレイは凝っていて、モネとマネの画集が飾られている。

ちなみに4年前はオバケのQ太郎が飾られていて、二度見した。

コレクターの店内には、こだわりってコレクトされたシングルモルトウィスキーとフィギアが並ぶ。
以前おじゃました際にお聞きした、マスターが官能小説で芥川賞を狙い続けているという話で盛り上がった。ちなみに今は、ファッション化してしまった芥川賞には興味がないらしい。というか、しばらく文筆をやめて写真に走ったらしい。でもあるときにキワキワの写真を撮っている自分に気がついて、文章の世界に戻ったとのこと。

そして今、マスターが目指すのはノーベル文学賞。歴代受賞者といえば大江健三郎さんが有名。「官能小説でマジですか?」とお酒も入った勢いで尋ねると「私、何かおかしいことを言ったかな?」といわんばかりに真顔でこちらを向くマスター。あぁ、港町にきたなと思うのでした。港町の冗談は、どこかディープでシュール。

マスターが「これこそ官能的だ」という、20世紀の最も重要な作家の1人と評価されるアイルランド出身の小説家、詩人、ジェイムズ・ジョイン。

しかし官能小説を軽んじることなかれ。マスターに聞くと小説の9割の本質は色物だという。「川端康成はロリータ文学です。日本には四季があり、それを情緒と捉えたのが川端康成」。学校の授業を場末の酒場で聞いているようで愉しくなる。

そういえば今はコロナで自粛中だが、私は毎年尾鷲へ祭の取材で訪れていた。今は客が私しかいなかったので、マスターを独占して「祭」について訊ねてみた。マスターは言う。「祭とは時間軸の崩壊作業。空間的なガス抜きが旅。つまり時空は途切れない。と言っちゃうと、ニュートンは怒るかな(笑)」。ふむ!面白くなってきたので「幽霊」についても聞いてみた。

「幽霊は時空における一つの現象。仏教における戒め。密接で強烈な体験。過去を垣間見るタイムマシーンみたいなもの」。むー!愉しいっ!港町の酒場で、私も自己流な妄想が脳内を走り出す。

話は弾み(脱線?)、幽霊と特殊能力を持っているという話題に。地球に宇宙人がいてもおかしくない、といういうマスターの話をバルタン星人のフィギアを眺めながら聞いた。アウロスタロピテクスだった人間の祖先が、どうやってホモサピエンスとして能力を身に付けたのか。それは立証するのが科学。それを妄想するのが、妄道。マスターは言う。「これが妄道」。眉間にしわを寄せ、そう語るマスターに、意義はない。思い出した!4年前も妄道のことを私は書いていた。

これも官能的だという、ヘンリー・ミラーの北回帰線。

「写真にさよさらをした。写真を撮っていると、文章を書きたくなくなるから」。深い〜話のような、そりゃそうでしょ!と突っ込みたくなるような気持ちを押さえてつつ、なぜ官能小説を書き続けるのか聞いてみた。「官能小説は怪談に通じるものがある。描写は中途半端じゃだめだ。文学の極意は怪談やと思う」。

ならば官能ではなく怪談を書けばいいのでは、と野暮なことは言わないのが港町の流儀。ちなみにマスターは最近、スクワットにハマっているそうだ。「運動は大事やでな」。と真顔のマスター。ゆるやかな時の流れに身を任せれば、港町の冗談はリアス海岸のように深い。

翌朝、清々しい港の風景。

「31歳のときに店を構えて27年。もうこの雑居ビルで1番古い店になりました」とマスター。港町尾鷲のディープな魅力に触れたい際は、チェックリストに入れておきたい店の一つです。

 


 

ショットバーCOLLECTOR
尾鷲市野地町12 駅前第二ビオラビル 1F
tel 0597-22-6599

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