2020年、Jリーグ入りに近づいたチームがあった。
「ヴィアティン三重」は、2012年に発足したサッカーチームである。2020年シーズンは、JFL(J1から数えて4番目のリーグ)で最終節までJ3昇格の可能性を残し、最終節に勝てば昇格というあと1歩のところまでたどり着いた(最終順位6位)。
愛知、岐阜に続き、Jリーグに所属するチームが三重県から誕生する。その期待は2020年の三重県をサッカーを愛する者を熱くさせた。
2020年12月8日(火)から13日(日)、桑名市博物館でパネル企画展「Go through!~ヴィアティン三重 2020年の軌跡~」が開催され、1年間の激闘を振り返る機会が持たれた。
今回の記事では、パネル企画展の様子を見ながら、2020年のヴィアティン三重の闘いを振り返っていく。
「シーズン開幕」
コロナの影響でシーズン開幕戦は、7月19日(日)までずれ込んだ。
初戦の相手は、テゲバジャーロ宮崎。場所はこけら落としとなった朝日ガスエナジー東員スタジアム。ヴィアティン三重と同じく、Jリーグ入りが可能な百年構想クラブ同士の開幕戦となった。
Jリーグ入りを目指す両者の闘いは、お互いに負けられない意地のぶつかりあいとなり、スコアレスドローでの決着となった。
2戦目は、リーグ4連覇中の王者 Honda FC。
運動量豊富に動き回り、相手にペースを握らせないまま迎えた38分に、佐藤が待望のチーム初ゴールをたたきこんだ。後半、同点には追い付かれたものの、王者相手に接戦を見せ、次戦に向けて希望を持たせる試合を演じた。
「初勝利」と「連敗」
3戦目は、同じくJリーグ加入を目指すFC大阪。
試合が行われたのは8月末ということもあり、35度を超えるコンディションのなか、前半に古川と塩谷の得点でリードを奪う。
後半に1点を返されたものの、守備陣が奮闘し、今シーズン初勝利を飾った。
4戦目は、MIOびわこ滋賀。シーズン初となる観客を入れてのゲーム。
サポーターの前で勝利を飾るべく、塩谷の得点で先生を奪うものの、後半終了間際に立て続けに初の敗戦。サポーターの前での勝利とはならず、初の敗戦となった。
5戦目は、松江シティFC戦。
悪い流れを断ち切るべく臨むものの、序盤から相手の猛攻に合い、前半に2失点。後半には選手交代から流れを取り戻し、塩谷の3試合連続得点も生まれたが、同点には一歩届かず。
悔しさの残る初の連敗となった。
一進一退の中盤戦
6戦目は、同じ東海地方を拠点とするFCマルヤス岡崎。
スタメンに新戦力を起用し、思い切った顔ぶれで臨んだこの試合は、先制点を許す者の、望月、森主、古川の得点で一気に相手を突き放す。
反撃にあったものの、見事に逃げ切り、ホームでのめでたい初勝利となった。
7試合目は、ヴェルスパ大分。ホームで連勝を目指したが、課題のセットプレーから先制点を許す。
積極的に攻撃を進め、勝利を目指すも、カウンターから追加点を許し、万事休す。ホームでの連勝とはならなかった。
8試合目は、奈良クラブ。J3クラブライセンスを持つ両者は、勝ち点でも並び、互いに負けられない一戦となった。
前半終了間際から相手ゴールに迫る場面が増える者ものの、味方のクリアミスから失点。
後半の猛攻も実らず、シーズン折り返し地点で順位を13位まで落とす、痛い連敗となった。
なんとしてもホームで連敗を阻止したい9戦目は、東京武蔵野シティFC。
前半からパスをつなげ、順調に得点を重ね、3得点を記録。守備陣も相手の攻撃を防ぎきり、ホームで完勝を遂げることができた。
10戦目は、ホンダロックSC。勝ち点で並ぶ相手との闘いは、セットプレーが勝敗を分ける戦いに。
FK・PKから失点し、2点を追いかける試合となったが、85分に野垣内が1点を決め、後半ATにPKを獲得する。しかし、PKは失敗となり、勝ち点1を逃す形となった。
念願の3連勝
11戦目は、ラインメール青森。昇格に向けて負けることのできない一戦は、先制点を許すものの、後半開始早々に古川のゴール、62分には塩谷のゴールで逆転。
アウェーで上位に食い下がる貴重な勝ち点3となった。
12戦目は、三重ダービーとなる鈴鹿ポイントゲッターズ。
序盤から激しい試合となったが、71分に塩谷が先制点をゲット。三重県選手権の雪辱をエースの一撃で果たし、久しぶりの連勝となった。
J3昇格に最も近づいた残り2戦
13戦目は、ソニー仙台FC。
強力な相手に対して、体を張ってゴールに向かっていくヴィアティンイレブン。78分に古川が得点し、最後まで守り切った。
今シーズン初めての3連勝となり、上位に迫る勝利となった。
14戦目は、いわきFC。ともに負けるとJ3昇格の可能性をほぼ失う試合は、意地とプライドのぶつかり合う激闘となった。
CKからエース塩谷が得点を奪うものの、1点を取り返され、その後も猛攻を受けるもなんとかしのぎきった。なんとか勝ち点1を奪い、最終節に希望を残した。
15戦目、最終節は、高知ユナイテッドSC。
他チームの結果がすべてヴィアティンにとって好条件となり、勝利のための1点を目指すもゴールが遠く、一瞬のスキを突かれ、まさかの失点。
最後まで猛攻をしかけるも、無情のタイムアップとなった。
Jリーグに最も近づいた今シーズン、今期の悔しさと期待は来季に持ち越しとなった。
最終結果は、6位。「ヴィアティン三重」は、ファン、サポーターに最後まで希望を持たせてくれたのである。
2020年の闘いは、このメンバーで繰り広げられた。
なかなか勝てない時期は、サポーターも辛い思いをしたが、なにより選手たちが一番苦しい思いをしただろう。
今季はコロナの影響で、第1節から第15節が中止とされ、選手もモチベーションを保つのが大変だったはずだ。そのなかで、最後まで希望を持たせる闘いをしてくれた選手たちには、感謝の一言しかない。
2020年、掴みかけた夢の続きは、2021年に持ち越されることとなった。
2021年の開幕戦は、3月14日に行われる。ホーム開幕戦は、3月21日にFCマルヤス岡崎を相手に行われる予定だ。
2021年の「ヴィアティン三重」の闘いが、もうすぐ始まる。その始まりを三重を愛するものとして追い続けていきたい。
三重県桑名市出身。愛知県名古屋市在住。