名古屋市、金山。三重県からもほど近い場所に、新たな本屋さんがこの冬誕生します。
「TOUTEN BOOKSTORE」「、」(読点)は文章の整理や息継ぎ、そして時にはアクセントとして使われる記号。それは、あなたの人生に立ち止まるきっかけを与えてくれる場所ー。
心の整理、行き詰った時の息継ぎを求めたとき、ふらっと立ち寄って店内を立ち歩き、本を手に取るうちに、自然となんだか嬉しい気持ちになる。
そんな日常に安らぎを与えてくれる場所が今冬、金山に誕生。その開業の流れには三重・桑名の「さかさま不動産」との出会いもあったと店主である古賀さんは話します。
今回の記事では、「TOUTEN BOOKSTORE」古賀さんの本屋への思い、そして「さかさま不動産」との出会いから「TOUTEN BOOKSTORE」への思いに到るまでをインタビュー形式で紹介します。
ー今日はよろしくおねがいします。まずはなぜ本屋さんを始めたいと思ったのか教えてください。
古賀さん(以下古賀):もともとは出版の取次、本の流通の仕事をしていて、名古屋支店の営業として3年間勤めていました。そのうちに本屋さんのことがすごく好きになっていったんですが、本屋さんは潰れていくし、辛い思いをして働いている人がいるという現実があって。「どうしてなんだろう」と疑問を思ったのが出発点です。
じゃあ自分で本屋さんができないかと考えたとき、本の聖地であり、出版社の約8割が集まる東京に引越しして働き始めました。本の企画、運営チーム「エディトリアル・ジェットセット」というところです。
そこで働きながら、去年から本屋に行きたくなるフリーマガジン「読点 magazine」を作り始め、今年の春に名古屋に戻ってきて、本屋「TOUTEN BOOKSTORE」の開業の準備を行っています。
ーどうして名古屋・金山という場所だったのでしょうか。
古賀:自分の理想としていた物件が偶然金山にあったということが大きいですね。道に面していて、1Fであること。あとは入りやすさや家賃、狭すぎず、広すぎずの大きさを考えていたときに、今の物件と出会いました。
ー出会いのきっかけはどういった形でしたか。
古賀:「さかさま不動産」を利用したことがきっかけです。以前取材を受けたときに「さかさま不動産」の存在を教えてくれた人がいて。ちょうどコロナの時期で時間もあって、奇跡的にタイミングも合い、トントンと進んでいったような感じですね。
ー「さかさま不動産」は、借りたい人の思いをネット上で掲載して、それを見た大家さんが「この人に借りてほしい」と連絡をしてくれるサービスですよね。実際に利用してみてどうでしたか。
古賀:文章は、自分で書いたものを掲載するだけで、あとは待つだけでした。だから、本当に連絡が大家さんから来たときはびっくりしましたね。しかもその物件は、前日に違うサイトで見ていたところだったんです。そのときは「不動産を介してまでやるのはなあ」と思っていたところだったので、本当に偶然でしたね。
ー奇跡的な出会いだったんですね。
古賀:すごいなと思いました。昨日見ていた物件の大家さんから連絡が来るなんて。実際に会ってフリーマガジンを読んでもらったらすごく興味を持ってくれたんですよね。大家さんも面白い人が集まる場所を作りたいと思っていたそうで、お互いの思いが偶然一致した形でした。
ー空き家に対して強いこだわりはなく、思い描いた理想の物件が偶然空き家だったというような形だったんですね。
古賀:そうですね。地域住民の人も優しく声をかけてくれるのがありがたいです。以前改装の準備をしていたら小学校高学年の女の子3人組がそれぞれ寄付をしたいと1000円を持ってきてくれて。「TOUTEN BOOKSTORE」は小・中学校も近い場所にあるのですが、それはとても感動しました。
今思えば、空き家を改装してお店ができるんだったらそれは地域にとって良いことなんだろうなと思うようにもなりました。始めてみて空き家の良さも知りましたね。
ー良い話ですね。改めてなんですが、「TOUTEN BOOKSTORE」の名前は、どこに由来するのでしょうか。
古賀さん:「TOUTEN」は読点、つまり「、」を意味します。情報があふれ、自分が知りたいと思ったことはすぐに検索ができる時代です、しかし、自分は今何を知りたいのか、知らないの外にある知らないまではアクセスできないし、検索することもできない。
「、」というのは、文中の切れ目に使う記号です。文章を整理したり、そこで読者に息継ぎをさせたり、ときにはわざとアクセントをつけるために使われたりもします。生活のなかにおいて、そんな役割が本屋さんにはあるのではないかと思うんですよね。
モヤモヤしているときや、だれにも会いたくないけど家にもいたくないというときに本屋さんという場所がそっと寄り添ってくれる。思考の幅を広げ、人や場所とつないでくれる、そんな本屋として存在していけたらと思っています。
ーなるほど。「TOUTEN BOOKSTORE」は2階建ての建物で、本屋以外にもカフェ機能を持ったスペースも準備されると伺いました。その話も詳しく教えてください。
古賀:「TOUTEN BOOKSTORE」は、日常使いと特別使いの両方ができる空間を目指しています。
日常使いができる本屋さんにするためには、大型書店さんに陳列されるような新刊や注目されやすい出版物を丁寧に揃えたいです。毎日通う人も出てくるでしょうから、その人たちが飽きないような工夫をどんどん考えていきたいと思っています。
特別使いができる本屋さんにするためには、空間づくりを意識して、プレゼントや自分へのご褒美となる生活雑貨を置きたいと考えています。
本屋好き、本好きの方たちに向けては、店舗限定商品の開発やSNSやメディアへの露出を積極的に行い、全国の本屋好きの方に来てもらえるようなお店を目指したいです。
そしてお店の入り口にはカフェをつけます。カフェを作ることで、毎日「TOUTEN BOOKSTORE」に通う理由ができます。「ちょっとお茶をしに行こうかな」という感覚で行けるようなお店ができたらいいですね。
ーカフェで使用されるコーヒーにもこだわりがあるんですよね。
古賀:「TOUTEN BOOKSTORE」が面する通りが大津通になるのですが、神宮、金山、東別院とずーっと歩いていくと「Q.O.L COFFEE」さんにたどりつくんですが、そのシンプルさに惹かれたのもあって。
あとは単純にコーヒーがすごくおいしいんです。東京にいたときにメルボルンで働かれていた経験を持つ方のお店に行ったんですが、その時に飲んだ浅煎りのコーヒーがジュースみたいにさっぱりとした印象ですごくおいしかったんですよね。
「Q.O.L COFFEE」さんもメルボルンで働かれていた経験をお持ちで、同じ味わいを経験できて。だから、「Q.O.L COFFEE」さんのコーヒーを利用したいと思いました。
お菓子も米粉を使用して、なるべく小麦や卵を使わないお菓子を仕入れたい。子どもさんや若い親御さんが多い地域なので、そういった方たちも気軽に来れる場所になればと思っています。
ーオープンが楽しみです。どんな人が集まる場所にしたいですか。
古賀:地域の人、金山に住んでいる人たちに来てほしいですね。世代を超えて本を通して対話ができる場所になればうれしいです。読書会なんかもやれたらいいなと思っています。
他にも2Fはゆっくりとくつろげるコワーキングなスペースにするつもりですし、地元の作家さんを呼んでギャラリーをしたいとも思っています。子どもが絵本を読んだり、読み聞かせを体験できるスペースも作るつもりです。
ーさまざまな年齢層の人が、それぞれ楽しめる空間になりそうですね。では最後に、「OTONAMIE」の読者でもある三重県民の方にメッセージをお願いします。
古賀:私は中京大学の出身なんですが、大学時代から三重県出身の友達が多かったんです。だから他県の人の感じがしないんですよね。三重から金山に通勤している友人もいますし、同じようにふらっと遊びに来てもらえたら嬉しいです。
ーこの記事をきっかけにたくさんの三重の人が「TOUTEN BOOKSTORE」に足を運ばれることを願います。古賀さん、今回はありがとうございました!
古賀さんの「TOUTEN BOOKSTORE」への思い、どう感じられたでしょうか。
「さかさま不動産」は拠点を三重県桑名市に持っており、三重県との強いつながりも感じられましたね。
金山は、三重県からも通勤や通学で利用する人が多い場所です。そんな金山に素敵なブックストアができるのはとてもうれしいことですよね。
「TOUTEN BOOKSTORE」は今冬の開業に向けて、資金をプロジェクトの理解者から募るクラウドファンディングを11月20日(金)午後11時まで実施し、無事資金の調達に成功しました。
「TOUTEN BOOKSTORE」のオープンが待ち遠しいところ。ぜひオープンした際には足を運んでみてくださいね。
三重県桑名市出身。愛知県名古屋市在住。