ホーム 01【食べに行く】 5670(コロナゼロ)ブロジェクトの現場から。真鯛の命がつないだ軌跡を辿る@友栄水産

5670(コロナゼロ)ブロジェクトの現場から。真鯛の命がつないだ軌跡を辿る@友栄水産

橋本さん一家

三重県南伊勢町阿曽浦で養殖真鯛を生産する、友栄水産の橋本 純さん(写真右・以下純さん)。年間で21万尾の真鯛を養殖や管理をしている。

今年の3月にコロナ収束の願いも込め、5670(コロナゼロ)プロジェクトを立ち上げ、日本最大級の直販サイト「ポケットマルシェ」で生産している真鯛を販売し、6月19日に目標の5670尾の販売を突破した。

友栄水産の通常の販売形態は、生け簀が付いたトラックで生きたままの真鯛を卸し、旅館やホテルに活魚を届ける。しかし、ネット販売のメインの商品となる真鯛まるごと一尾は、内蔵とウロコだけを処理する鮮魚の扱い。5670の現場では魚を処理して発送するという業務に大忙しとなっていた。

その挑戦は、多くのテレビや新聞などにも取り上げられた。そんな多忙な最中、プロジェクト開始から電話で純さんに何度かお話を聞かせていただいた。

5670の現場では何が起きていたのか。
今回は生産者と消費者の間に生まれた、新たな繋がりをお伝えしたい。

 

—パニック状態の現場に響く、感謝の電話。

発端は、コロナの影響で多くの真鯛の出荷が、次々とストップしたことだった。

“もう笑うしかなかった”

そう話す純さんは、行き場をなくした真鯛をインターネットで直接消費者に販売することを決意。
友栄水産のスタッフ、そして息子さんたちまで一丸となって目標を目指した。

“今までと違うことすると、ホンマ毎日、いろんなことが起こるわ”

出荷を終えた夕方に電話をすると、そう話す純さんはどこか嬉しそうだった。
話を聞くと、最近コロナの影響で帰れない実家に鯛を送りたいと注文が入った。しかし実家の親に発注者から連絡が入っておらず、いきなりクール便でお頭付きの真鯛が丸一尾送られてきた親は驚き、友栄水産にクレームの電話が入ったのだという。「お子さんからのプレゼントですよ」と伝えると親は電話を切った。
そして先程、鯛をさばいて食した親からクレームとは逆の感謝の電話が入ったという。

“一日に500尾の注文が入ることもあって、こっちはパニックに近い状態。でもお客さんから言葉がもらえるのは嬉しい”

購入者からのこんな印象的なエピソードも話してくれた。

とある家族から鯛一尾丸ごとの注文が入った。あとで聞いたら引き籠もり気味のお子さんのいる家庭だったそうだ。普段、家族はバラバラの時間に食事をしていた。しかし家に鯛一尾が届くと、籠もっていたお子さんも興味を持ち一家揃っての食卓に。久々に食卓には会話と笑顔が戻ったという。

“一尾丸ごと。昔はどこの家庭もそうやった。本来の食卓の姿なんやと気づかされました”

 

 

—食べることの歓びは、命への感謝から。

他にも何千通も届いたという購入者のメッセージから、少しだけ抜粋してご紹介したい。

自粛のなかワイワイ楽しく調理できみてるだけでも脂がかなりのっているのがわかりました(*^^*)全て未熟なので出来上がりはアレですがwお刺身、湯引き、昆布じめ、塩焼き、たい茶漬け、あら汁と欲張りましたが鯛ってこんなに美味しかったっけ?と家族で話ながら楽しく美味しく頂きました。明日はあら汁の出汁とすき身を使い鯛めしにして楽しみます(*^^*)大きな鯛を一匹で購入でき存分にたのしめました…まだただこれから大変ですがどうぞ頑張りましょう!美味しかったです!ご馳走様でした(*^^*)

沖縄に住んでいる高齢の両親が外出自粛などで気が滅入ってそうなので、少しでも励みになればと思いこちらを利用させていただきました。お電話にて捌き方や食べ方など丁寧に教えて頂いたようで、とても喜んでおりました。捌きたての中落ちを味見したようなのですが、とても美味しく感動しておりました。久しぶりに明るい声が聞こえて良かったです。また利用させていただきます!

子供達も初めて見る大きさにテンションあがっていました!内臓処理がしてあってお料理が簡単に出来ました!ありがとうございます!こんな時期ですがみんなで出来ることをですね!

北海道の最果てに住む両親へ送りました。鯛を送ったと連絡した日から、元料理人の父が包丁を研いで待っていたそうです笑。母が電話で開口一番「届いたよ~大きいよぉ~!!」脂ものっていて味見が止まらないと言っていました。また「手塩にかけて育てた魚が出荷できないなんて、そんな辛いことはないだろう」とも言っていました。

料理人に憧れる小学生の息子への誕生日プレゼントに真鯛をお願いされました!頑張って捌きました!本当に美味しくて、家族みんな大喜びです。

大好きな鯛の塩釜焼きを、まさか自宅で食べられるとは思いませんでした‼︎母が塩釜に模様を楽しそうに描いてくれました。普段は寡黙な父の、鯛はこんなに美味しい物だったのか、という一言が全てを物語っていると思います。

生まれて初めて鯛を捌きましたが、あまりの重厚感に一苦労、食べる前にお腹一杯になってしまいそうでした(もちろん完食です)。自分で捌いてみて、自然の、命の重みを実感できたような気がします。とても良い機会を頂きました。

生命に感謝していただきました。とても美味しかったです。

生産者は自分が育てた野菜や果実、魚や牛などを「この子」と呼ぶことがある。育てあげてきた命には生産者の想いも詰まっている。
純さんは5670尾の販売突破に際し、購入者へこんなメッセージを送った。

“この度は「人が食すために育て上げた真鯛」をご購入いただきありがとうございます。新型コロナウィルスの影響で行き場を失った21万尾の鯛。一筋の光に希望を乗せて始まった5670プロジェクト。沢山の皆様の応援にささえられ、2020年6月19日に目標に掲げた5670尾をインターネットで販売することが出来ました。本当にありがとうございます”

“皆様が家庭で包丁を持ち、私どもの鯛を捌いて召し上がってくださったこと、「いただきます」「ごちそうさま」と温かなコメントや写真を頂けたこと、嬉しくてたまりません”

“鯛の命のバトンをあなたに。あなたの命を、コロナが収束する未来へ。これからも皆様に鯛をお届けするために前進して参ります”

伊勢志摩国立公園内にあり風光明媚なリアス海岸が広がる阿曽浦

 


 

友栄水産は阿曽浦という漁村をフィールドに、漁師体験や磯体験、ゲストハウスの運営などを手がけている。過去に何度かOTONAMIEでもご紹介しましたが、地方に関心が高まる昨今、次回は改めてそちらの取り組みをご紹介したいと思います。

Photo:y_imura


 

友栄水産
三重県度会郡南伊勢町阿曽浦345
tel 0596-72-1351
友栄水産hp https://yuuei.co.jp
ゲストハウスまるきんまるhp https://marukinmaru.com
fb https://www.facebook.com/yuuei.fish/
in https://www.instagram.com/jun_irukajin/

▼レシピや漁師体験なども発信中
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ポケットマルシェ

 


 

この記事はGoogleジャーナリズム緊急救援基金の支援金にて作成しました。

▼Googleジャーナリズム緊急救援基金

https://newsinitiative.withgoogle.com/intl/ja/journalism-emergency-relief-fund/#introduction

 

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