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連載エッセイ【ハロー三重県】第9回「食べてつくって遊んだ日」

以前、私はここでスペイン村を愛している旨お書きしたと思うのだけれど、もうひとつ、愛すべき場所について書かせていただきたいのでお時間下さい。

先日、「伊賀の里モクモクファーム」に行ってきた。
もう何度目だろうか、片手では足りないくらいには行っていると思う。
べらぼうにリピートしているとは言い難いかもしれないけれど、出不精な我が家にとってはスペイン村に次ぐ頻出スポットだ。

伊賀の里モクモクファームというのは、食べたり採ったりつくったり体験したりできる、食と農業の体験型施設。

今回は四家族合同のお出かけだったのだけれど、みんなてんでバラバラの場所からの参加だった。
ある人は奈良から、ある人は京都から、またある人は兵庫から、そして我々一家は県内から赴いた。
みんなで口々に「どのくらいで着いた?」と言い言いしていると、驚いたことに兵庫南端の一家でも二時間程度であり、それ以外のみんながだいたい一時間~一時間半で到着したという。
私は地図をうまく読むことができないので、この会話に奇跡めいた感動を覚えてしまったのだ。
いや、地図を頭に浮かべてなんちゃら道となんやらICを経由して、とイメージできる人からしたら合点のいく話かもしれないのだけれど、私個人としてはあらゆるダンジョンが奇跡的に交わった場所、それがモクモクファーム!!!みたいな感動があったのだ。
平たく言うと、各地からアクセスがしやすくて最高だね、ということです。それだけと言われたらそれだけなんだけど。
でもそれってすごいことだよね。

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まず、京都からのご一家が予約してくれていた、ファーム内のビアレストランで食事をした。モクモクファームのお料理のおいしさって、安心とおいしいの二重構造だから揺るがない。
ましてこちらは子連れなので、この二重構造のありがたみは大気圏に突入するくらい突き抜けている。
お野菜のお料理が豊富にあって、子どもたちがこの世で一番好きな肉、つまりソーセージが何種類もある。ピザだってパスタだって、デザートだって、どれをとってもその背後においしいと安心が仁王立ちで立っているのが見える。ただ両手を広げて、好きなものをおなかいっぱいお食べなさいと言えるこの大らかな気持ち、プライスレス。
夫に昼間のビール(モクモク地ビール。素敵オブ素敵)を許可することだってできてしまうよ。

お腹が満たされたら園内をすこしうろうろ。
お天気もとてもよい日で、緑の中を歩いているだけで気持ちがいい。
いかだに乗ったりしているうちに、豚まんづくりの体験のお時間になった。
京都からの一家(また。お世話になりました。深々)が予約してくださったのだ。
この豚まんづくりには、二年ほど前にも一度参加したのだけれど、未体験の方がいらっしゃったら全力で推したい所存。
私は小学生の時に産まれて初めて食べた肉まんのおいしさの衝撃を三十年近く引きずって、いまだに好物は肉まんと言えるくらいに肉まんが好きなのだけれど、このもくもくファームの豚まんがだいぶ本気だし、そうとうおいしいのだ。
子ども向けの手作り体験だと侮ってはいけない。
皮が手作りなのは言うまでもないのだけれど、中の餡がとても本格的。
あらびきの豚のひき肉に、豚の脂身をさらに添加する本気レシピ。
紹興酒だって入れる。え、なに、中華街なの?
紹興酒を人生で触ったのはモクモクファームでだけです、私。
皮は子どもの弱い力でコネコネしてもちゃんと発酵してくれたし、小さい手では包むのってとても難しいのではと案じたけれど、どうしてなかなかうまいこと出来上がった。
因みに、参考までに、我が家は七歳、五歳、二歳、の布陣で参加した。
途中、わたわたする場面がなかったわけではないけれど、困ったときはスタッフさんが助けて下さるので問題なく最後まで作ることができた。
とてもおすすめ。

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この日は我が家を含め、子どもが総勢七人もいて、豚まんづくりの後は各々興味の惹かれるほうへ散っていった。
ハンモックに揺られたり、ミニブタショーを観たり、もみがら広場を飛び跳ねたり、乳搾りをしたり、ザリガニ釣りをしたり、遊ぶことがほとんど無限にある。
中でもザリガニ池は季節が終わりがけにもかかわらず、大変な盛況で、大勢の子どもたちが竿を垂らしてひしめき合っていた。
うちの子も例に漏れずやりたいと言ったのだけれど、けっきょく釣りあげることが叶わず諦めていた。夏にまた来ようね。
因みに七人いた子どものうちのひとりがこのザリガニ池に猛烈に恋してしまって、豚まんをつくった後のほとんどすべての時間をそこで過ごしていた。
な、な、夏にまた来ようね…(釣れなかった)。
気持ちは分かるよ。

いろいろ遊ぶところがあるモクモクファームだけれど、これだけはぜひ!とあえてひとつ挙げるとするなら、ポニーの乗馬体験だろうか。
くるりと小さな柵の中を一周するだけなのだけれど、乗馬感が増すヘルメットをつけて馬に乗るのは子ども心にかなり高揚するようで、長女も長男もとても喜ぶのだ。
園の中心部から少し離れた牧場なので、日が傾く前にぜひ。

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遊ぶだけ遊んだら、最後は温泉で〆る。
遊び場の中の温泉だと侮っていたらばちが当たるよ。
想像以上に温泉なので期待をむんむんに高めて入ってもらって大丈夫。
露天風呂が三つもあって、そのうちのひとつが季節の温泉になっている。その日はりんご風呂だった。
お風呂にたくさんのりんごがぷかぷか浮いていて、いいにおいとかわいいビジュアルに子どもたちが大喜びだった。
食いしん坊の長女が隙あらばりんごを食べようとするのを止めるのが非常に大儀だったけれど、とてもいいお湯だった。
りんごのお風呂楽しかったね、と子どもたちも気に入っていた様子。

クリスマスを前にしていたこともあって、夜はイルミネーションがとてもきれいで、写真を撮りあって解散。
帰りの車中で豚まんを食べつつ、子どもたちはうとうとしながら帰路に就いた。

丸一日遊んだけれど、のんびりしたモクモクファームの空気とおいしいごはん、そして、最後に温泉にゆったりつかったおかげで疲労はゼロだった。
それどころか、翌朝も園内で買ったおいしいソーセージを朝食にして、引き続きほくほくのほくだった。

兵庫からの一家は園内のコテージでお泊りもしていったらしい。
あらゆるダンジョンが交わるミラクルスポットだけれど、お泊りもできるとか強すぎるよね。
三重県には、このように全方位的に満たされるモクモクファームというスポットがありますよ、と日本中に向けて自慢したいよ、というお話。

 

 

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