皆さんこんにちは、働く女性を応援したいTOSHIです!三重県出身の女性です。
今回は、伊勢を拠点にして働く、街を歩けば人が手を振る、注目の「人力車にじいろ」の女性車夫を取材させていただくことができました!!
この方のおかげで、伊勢が魅力のつきない場所であること、その訳や、神秘までを、垣間見ることができた気がします。
病を克服してまでこの世界に戻ったといいます。彼女が「女性車夫」という仕事を好きな理由はなんなのでしょう?
人力車、伊勢神宮、伊勢観光に興味のある方、働く女性、必見です!
|人力車、伊勢。三重県出身の筆者にとっての伊勢とは「社交的、貴族的?」
三重県といえば「伊勢神宮」ですね。三重県がどこにあるか知らない方からも、「三重って、伊勢神宮のあるところですよね」と言われることが私も非常に多いです。
ちなみに伊勢神宮は正式には「神宮」といいます。地元では「お伊勢さん」と呼ばれることも多いんですよ。
私は同県人でもそこから少し遠くの生まれです。伊勢、伊勢神宮にはもう何十回も行きましたが、「伊勢の人ってどこか違うな」と思ってきました。
「伊勢商人」という言葉があります。少女時代に母と一緒に伊勢に行った時、なにげなく入ったお店で、出身地について話したら、お店の方々が、
「へえっ、あちらから来られたんですか。うち、◯◯さんと知りあいですよ」
と、実家の近くのお菓子屋さんの名前を出されて、初対面で会話をふられたので驚きました。やはり、「伊勢商人」の方々は社交的なのでしょうか。
また、これも私見ですが、伊勢の人はどこか貴族的な気がします。
三重県が日本のどこにあるかまったく知らない人でも、伊勢神宮が三重にあることは知っている。そして、行った人は、びっくりするような確率で、「よかった」と言うのです。
今までで一番、意外だったのが、東京に住んでいた時、最後まで全然話が合わなかった、私の担当の若い女性の美容師さんが、
「社員旅行で伊勢に行ったんですよ。何があるのかな?と思っていたんですけど、伊勢神宮よかったです――」
と、顔を輝かせて言ったことでした。
あの西行法師は伊勢神宮にお参りした時にこう詠んでいます。
「なにごとのおはしますかはしらねどもかたじけなさに なみだこぼるる」
そして私も、伊勢に行くと、「神様はいる。ここにいらっしゃる」と思います。深い理由はありませんし、なぜかは分かりません。それはそれこそ言葉にはできない感覚で、行った人が感じるものかもしれません。
|人力車、伊勢。病を乗り越えて女性車夫に!「人力車にじいろ」の北原さんがこの仕事を選ぶ訳は
「人力車にじいろ」の北原美希さんは、伊勢を拠点として働く、全国でも珍しい女性の車夫(俥夫「しゃふ」・人力車をひく人)です。
和歌山市のご出身で、奈良県桜井市で車夫デビュー。町おこしの事業に関わるも、人力車の出発式からわずか数週間で、脳梗塞になり入院。
翌年の2014年に心臓の手術を受けました。医師から「人力車はもうひけないよ」と言われた身から、努力の末にカムバックしたという方です。
――大変な苦労と努力をして、このお仕事に戻られました。人力車、また、車夫という仕事の魅力はなんでしょうか。
そう質問したところ、こんな答えが。
北原さん:「まずは乗ってみましょうか」
そこでおすすめコースの「三区間(約30分)」にチャレンジ。行き先は北原さんにおまかせすることにしました。
取材時は冬。伊勢神宮の内宮の鳥居前と呼ばれる場所から、カイロをしいてもらって、出発です。
人力車に乗るって、どんな感じなんでしょうか?
あれっ、全然怖くありませんよ!!
すいすい行って、爽快感があります。これは気持ちいい!
これから、「神宮の森」、「とび石」に行くそうです。
それにしても、北原さんへの注目度も凄い!通りすがりの車の中から手を振る人がいますよ。
「取材?この子のこと、よう宣伝したってや!」、「よろしくな」と、2度、地元の街の方々から直接頼まれました。
あっという間に街を離れて森の方へ。最初に人力車が止まったのは「宇治神社」。「足神さん」の呼称で親しまれているとか。健康健脚をお願いする神社で、有名なスポーツ選手もお参りされたそうです。
そういえば信仰の対象を「◯◯さん」、「◯◯さん」って呼ぶのって、ひょっとしたら方言というか、三重弁でしょうか。関東出身の母に訊いたら、「私は『◯◯様』って呼んでたと思う」とのことでした。ちなみに三重の言葉は地理的なことを考えても、関西の影響があるといわれているんですよ。
五十鈴川です。この川の向こうは伊勢神宮の内宮です。
少し前から、あたりの雰囲気ががらっと変わった気がするのですよ。
ここはもう森の中。今日は曇りのせいか、いつもはもっと人がいるそうなのにそうではないせいか、空気がきれいなのはもちろん、独特のもやがかかったような不思議な場所に見えました。
ある所で、北原さんにこう言われました。
北原さん:「見えますか?ここの、川の向こうのあのあたり、内宮の御手洗(みたらし)ですよ」
伊勢神宮の内宮の「五十鈴川御手洗場(いすずがわみたらし)」は、参拝する前に心身を清める場所です。
五十鈴川のほとりに敷き詰められた石畳は、徳川綱吉の生母である桂昌院(けいしょういん)の寄進といわれています(今は川の中に入るのは禁止されています)。
――お参りするたびにあそこに行くのに、違う視点から見たのは初めてですよ!こんな場所があるんですね。
川のほとりの石畳のあたりで、たくさんの人がいるのが見えました。いつもは私は「向こう」にいる。これも不思議な感じでした。
伊勢神宮には何十回もお参りしている私も、本当にびっくり。それについ先程まで、にぎやかな場所にいたのに、森に入ってから、本当にたまたま今日だけなんでしょうか、人もほとんどいなくて、もの凄く水も澄んでいて、その澄み方が、いわゆる、きれいでも観光地化された森や川と違う気がするのです。
そう思っていると、北原さんが対岸を指してこうおっしゃいました。
北原さん:「あの流れは、ご神域を流れているんですよ。ここでこちらに合流しているんです」
――神域を流れていた水と合流・・・だからかな、なんだか凄い色ですね。
繰り返しますが、川の向こうは伊勢神宮の内宮で、あんなに厳かな森を私は見たことがありません。
女性車夫と聞いて、もっと男まさりな人を想像していたのですけれど、私から見た北原さんは、笑顔を絶やさないと同時に、どこか凛(りん)とした美しい方で、神宮の森の中で、とっても生き生きしていました。
私は冬が好き。冬の神宮の森はとてもきれいでした。それに、そんなに寒くなかったです。
――私見ですが、北原さんとお話していると、時々、巫女さんと話しているような気持ちになります。
北原さん:「本当ですか?・・・私、和歌山にいた時から、伊勢に魅かれるものがあったんですよ」
――えっ、そうなんですか!?
北原さん:「初めての伊勢神宮で正式参拝を受けた帰りの、宇治橋(五十鈴川に架けられた木造の橋で、神宮の表玄関とされる)を渡っている時、架け橋という言葉が全身に響いた・・・架け橋になれたらと思っています」
――そういえば、「人と人・心と心をつなぐ 虹の架け橋でありたい」って公式サイトにも書いていらっしゃいましたね。
――じゃあ、お仕事は楽しいですね。
北原さん:「はい、楽しいです。それに、人力車って五感を使う乗り物だと思うんです」
|人力車、伊勢。「とび石」、「裏参道」とは
北原さん:「この石は『とび石(飛び石)』といいます。諸説あるんですが、裏参道といわれたところだとの伝えもあります」
ーー「とび石」、「裏参道」との伝えもある、というところですか。
北原さん:「かつて、伊勢の神宮にはお坊さんや尼さんが宇治橋を渡って参拝できない時代がありました。そのため、このとび石を渡り僧尼拝観所(お坊さんと尼さん専用の参拝場所を設けられていた)まで行ってお参りしていたらしいんです」
――ああそうか、神道と仏教ですもんね。今は関係ないでしょうけれど、そんな時代があったんですか。だから「裏参道」だった。そういう説もある。
北原さん:「途中まで渡ってみますか」
「伊勢へ行きたい、伊勢路が見たい、せめて一生に一度でも」と伊勢音頭でも歌われた伊勢。
お坊さんや尼さん、僧籍の方々も、伊勢神宮にお参りしたいという気持ちは同じだったのでしょう。
誰がどんな思いでこのとび石を渡ったのでしょうか。感慨にひたらずにはおれませんでした。そして伊勢神宮は、その人達の気持ちを受け入れていたのかもしれません。
こちらが川岸にある、「とび石」と彫られた石です。
街に帰ってくると、伊勢神宮の内宮の鳥居前はお参りの人達で大いににぎわっていて、森の中のことが嘘のようでした。
やっと日が照ってきたので最後に1枚。この虹色の風車は、年に一度、遠くから来てくれるお客さんがくださったんだそうです。
なぜ病気を克服してまでも車夫という仕事を選んだのか、なぜこの仕事が好きなのか、それは一言で答えられるものではないのだと思います。でも北原さんがこの仕事を愛しているのは、一挙一動から伝わってきました。
北原さんは、その他にも本当にいろいろなことをご存じで、伊勢は奥深く、なんど訪れても飽きない場所だと実感しました。たくさんの人が信じ、憧れ続ける場所には、言葉にできない力が集まってくるのではないでしょうか。いずれにせよ、どうもありがとうございました。
人力車にじいろ 公式サイト https://www.jinrikisyanijiiro2416.com/
伊勢志摩観光ナビ https://www.iseshima-kanko.jp/
伊勢神宮 公式サイト http://www.isejingu.or.jp/
「それでも東海は世界一」と愛してやまない、ほぼ食レポ出身のライター。三重県出身だが、最近三重のよさに目ざめた。某調理師専門学校の通信生。旅と食、人間の美がライフワークです。別名は竹井夙(たけいとし・「夙」の字は「しゅく」で変換可)。https://ameblo.jp/6104163/ 得意ジャンル:食レポ、旅行関係、人間の美の追求