「今年も秋になってきたなぁ」
車を運転していると毎年、10月頃にはオレンジ色の斑点模様が目につくようになってきます。そこには、たわわに実った柿畑が広がっていました。子供の頃から繰り返し見てきたので、その光景が秋の訪れを想起させるのでしょう。個人的には伊勢・玉城・多気・松阪あたりの柿畑の光景が目を閉じると浮かんできます。人それぞれに思い浮かぶ光景は異なり、ふと思い出した時はきっとどこか懐かしさを感じていることでしょう。
三重県は意外?に柿の産地です。
確か次郎柿は日本でも上位に入ってくる生産量だったと思います。柿はビタミンCがとっても豊富で実は柑橘類の約2倍もあるそうです(詳細は柿 ビタミンCで検索してみてください)。
僕が暮らしている伊勢市では毎年珍しい柿が実ります。
その名は「蓮台寺柿(れんだいじがき)」。形は多角形、菊型、小判型と様々な形をしていて、果肉はとっても柔らかい、とろけるような味が特徴の柿です。
以下、少し難しい蓮台寺柿の由来です。
【蓮台寺柿の由来】
伊勢神宮のおひざもと伊勢市勢田町(旧宮本町)に350年前、神宮祭主大中臣永頼(じんぐうさいしゅおおなかとみながより)が建立したと伝えられる鼓嶽山蓮台寺(ごがくざんれんだいじ)。明治2年に廃寺。この寺の名前にちなんで、この地域で栽培される柿を蓮台寺柿と名付け、昭和33年には市の天然記念物にも指定された。
「天然記念物を食べていいの?」と疑問に思う方もいるでしょう。蓮台柿は伊勢市地域でのみ生息し生産量も少なく希少性があり、病気や害虫に弱く樹木の老化も心配されたことから、市はその保全・保護を目的として天然記念物と指定しました。それがただ食べ物であったということだそうです。
柿には実は品種を大きく分けると4つに分かれ、「完全渋柿」、「不完全渋柿」、「不完全甘柿」、「完全甘柿」があります。
「完全渋柿」は種があっても渋抜きをしないと食べられない柿
「完全甘柿」は種がなくてもそのまま美味しく食べられる柿
「不完全渋柿」は種があったら種の周辺だけ渋みが抜ける柿
「不完全甘柿」は種が多いとそのまま美味しく食べらる柿
さて、蓮台寺柿はどこに該当するかというと・・・
正解 「不完全甘柿」
※.正解者には何も出ません。
柿の渋みは果実に含まれるタンニンが原因です。柿の果肉に黒いゴマのような点があることがありませんか?それは、タンニンが水に溶けない形に変わった姿(※.天然の物に限る)・・・蓮台寺柿は専用装置を使い、脱渋用の炭酸ガスに24時間程度入れることで脱渋されます。そして、タンニンは無くなるのではなく、水に溶けないよう変化させることで人は渋みを感じなくなります。フグなどもそうですけど、初めて渋柿を脱渋して食べた人の「食」への探究心には敬服しますよね。
ちなみに「不完全甘柿」である蓮台寺柿の1割は渋抜きをしなくてもいい甘柿もあるそうです。逆に9割は渋柿。また、中には果肉の半分が甘柿・もう半分が渋柿というレア物も。
今年の蓮台寺柿は味は例年通りで、収穫は台風の影響で当初に見込みより2割程度減ってしまったそうです。希少な柿がさらに希少です。購入できる場所は県内ですと南勢地域のスーパー、販売期間は11月中旬頃までです。
ちなみに皆さんは柿の食べ方はどうしてますか?
おそらく、シャクシャク派か、ジュクジュク(熟熟)派に分かれることでしょう。
※.僕が勝手に派閥を今作りました。
あなたはシャクシャク派?ジュクジュク(熟熟)派?
やっぱり柿の食感で魅力的なのはジュクジュク(熟熟)の方でしょう。僕はそう思います。爪楊枝でさすとすっと果肉に入り込んで、口いっぱいに頬張れば柔らかく甘さがじゅわ~と広がる感覚がたまりません。
シャクシャクも美味しいですよね。※念のため擁護
柿はもっとフューチャーされてもいい果物だと僕は思っています。なんて言ったってビタミンCが豊富なんですってよ奥さん!蓮台寺柿をはじめ、今年も秋の実りを楽しみましょう。
<取材協力者:JA伊勢蓮台寺柿部会長の中澤利吉さん>
濱地雄一朗。南伊勢生まれの伊勢育ち。三重県といっても東西南北、文化や自然・食と魅力で溢れていることに気づき、仕事もプライベートも探求する日々を過ごす。探求を続けると生まれた疑問、それが「何で◯◯が知られていないんだ」ということ。それなら、自分でも伝えていくことだと記者活動を開始。専門は物産と観光、アクティビティ体験系も好物。自身で三重県お土産観光ナビも運営中。