子どもの声が響く、漁村の狭い路地。
10月末なのに強い日差し。風が心地良い。
顔立ちが整っている、鼻の高い島民。
九鬼水軍、九鬼嘉隆が最期を過ごした島らしい。
私はよそ者。だれも知らない。
繋がっていない開放感。
繋がっていく喜び。
歩こう。
漁が終わり、人のいない港。鳥の声。
密集した集落。夕飯を準備する音。話し声。営み。
失ったり生まれたりを繰り返す、希望。
この島に来るまで感じていた、蜘蛛の巣みたいにゴチャゴチャした雑感。
何気なく開いたSNSに、悲鳴みたいな投稿。
ゴチャゴチャした世界に生まれてくる子ども。
ゴチャゴチャした世界で、小さな声が届かずに消えてしまう若い命。
「おはよう!今朝大丈夫やったか?」
昨晩、一緒に飲んだ海女さんがクルマで通りすがりに、大きな笑顔で声をかけてくれた。
この島は人と人が会うと、そこに必ず声がある気がする。
島に来て感じたこと。リセット=再生。
今、足りないと感じるコト。
もうこれ以上いらないと思ったコト。
硬い型に当てはめたがる大人たち。
声を失う子どもたち。
この島には今日も、声が響いている。
子どもの大きな声が響いている。
いつまで続くか、わからない状況で。
離島の子どもの個性を奪いかねない、経済的効率性から発生した時代遅れの波が、確実に島に押し寄せている。
全体を論理で貫けるという錯覚。少数でも想いがあるという強み。
例外なく、みんな誰かの子だ。
想いという楯に、論理という鋭い刀が刺さらないことを願いながら。
voice.
そこにある、リアルな声を伝えたい。

村山祐介。OTONAMIE代表。
ソンサンと呼ばれていますが、実は外国人ではありません。仕事はグラフィックデザインやライター。趣味は散歩と自転車。昔South★Hillという全く売れないバンドをしていた。この記者が登場する記事