海が望める小高い山の上に、小さな絵本屋さんがある。
開店して1年ちょっとのそのお店のことを知ったのは、友人からの知らせだった。
「紀北町に絵本屋さんがあるの、知ってる?」
いや、全然知らなかった。
気になってインターネットで調べてみたら、お店のインスタグラムのアカウントがあり、見てみるとお店の様子と入荷した絵本の紹介をしていた。
お店の名前は『BUMBLE BEE BOOKS』(バンブルビーブックス)。
「Bが3つか」とは、ミヒャエル・エンデの『はてしない物語』の中で、主人公のバスチアン・バルタザール・ブックスが、古本屋の店主に自己紹介をした時にその店主に言われた台詞。
そのお店の名前を聞いて以来、なんだか『はてしない物語』のバスチアンや、不思議の国に迷い込んでしまったアリスのように、絵本に夢中になって絵本の中に迷い込んでしまう子どもの姿を想像して、ずっと気になっていた。
実際に行ってみると、その絵本屋さんは山の上にあり、そこからは海が見え、水色を基調としたお店も可愛くて、本当にちょっとしたファンタジーの中に迷い込んでしまったような、ワクワクした気持ちになった。
子どもの目線に並んだ本の中から絵本になった『星の王子さま』を手にとってみた。
「『星の王子さま』好きですか?私も大好きで、『星の王子さまミュージアム』まで行ったんですよ」
そういえば、お店の看板にもキツネの絵が描かれている。
もしかして看板のキツネは、『星の王子さま』に出てくるキツネのエピソードが元になっているのかな?
「そうですね。それもありますし、キツネは他の絵本にもよく登場して、私も大好きな動物なので」
オーナーの羽山さんは、お店を本格的にオープンする前から、インスタグラムを使って、絵本の紹介をしてきた。
そして約1年前、紀北町に『うみのそばの やまのうえの ちいさなえほんや』、BUMBLE BEE BOOKSをオープンさせた。
町から本屋さんがどんどんと減っていく時代、そしてインターネットなどで本を買うことができる時代、実店舗の絵本屋さんってどういう存在なんだろう?と思っていた。
「絵本って、お母さんが子どもに買ってあげるものだけど、どんなお話なのか、内容を全部を知ってから買うじゃないですか。かと言って(絵本屋さんが)インスタなどで中身を全部公開することもできない。だから、実際に手にとって読んでもらうことが、結構大切なんです。あと、『仕掛け絵本』とかって、色んな仕掛けがあるので、それも実際に手を使ってみないとその楽しさがわからないですよね」
だから絵本屋さんは実店舗であることが大切なのだと思う。
以前、「高校生にプレゼントしたい」というお客さんの相談を受け、その高校生はどんな人なのかを聞いた上で、「じゃ、これなんかどうですか?と選んでいます」とのこと。
それもまたインターネットではなく、お店ならではのことだと思う。
その作者はどんな人なのか、とか、その絵本はどんな出版社から出ているのか、とか、置いている絵本にまつわることはとことんリサーチしている羽山さん。
「絵本の内容もそうなんですけど、その絵本を作った人がどんな人なのかが、すごく気になるんですよね」
やっぱり、絵本全般に関わることが気になるみたいで…….
確かに。
こんないいロケーションで、素敵な絵本屋さんがあって、近くに少しお茶ができるカフェがあったら最高だ。
イベントなどに出張でカフェをしたりもしているので、いつかまた、コロナ禍がおさまったら、お茶を淹れる道具とお菓子を持って、この海の望める山の上の絵本屋さんに来たい、と思った。
不思議の国に迷い込んだアリスのティーパーティーのように。
BUMBLE BEE BOOKS(バンブルビーブックス)
住所:三重県 北牟婁郡 紀北町 東長島3108-108
営業日:毎月の営業日をインスタグラムにて公開しております。インスタグラムをご覧ください。
Eメール:bumblebeebooks.ehon@gmail.com
インスタグラムアカウント:https://www.instagram.com/bumblebeebooks.ehon
たかやん。OTONAMIE公式記者。三重県尾鷲市にあるカフェ「Scale」で働く茶坊主。コーヒー、本、映画、人文学、デザイン好き。趣味は園芸とウクレレとカメラ。フリーペーパー製作に関わっていた経験を活かして、尾鷲市のカフェからのんびりレポートいたします。得意ジャンルは人物紹介、お店紹介、イベント、町ネタ。