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海へ出よう!南伊勢町でみた家族のかたち/サニーコーストカヤックス

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サニーロード終点から志摩方面へ5分ほど走ると、五ヶ所浦という小さな町がある
海の近くのこの町でシーカヤックをするために移住してきた夫婦がいると聞いた。
埼玉県出身のご主人と、大阪府出身の奥さん。
この町で働くこと、子どもを産み、育てること、暮らすこと、この町が彼らにもたらしたものは何だったのか。
少し話を聞かせてもらうことにした。
車を降りると少し湿った風が吹き、潮の香りが漂ってくる。

 

シーカヤックに魅せられて

サニーコーストカヤックスの代表を務める本橋洋一さん。
出身は海なし県の埼玉だそうだ。
最初は川でのカヤックから始めたらしいのだが、ひょんなきっかけから海でカヤックを経験し、シーカヤックの魅力に目覚めたそうだ。
伊勢で弟子入りをした後、この南伊勢町の五ケ所浦に流れ着いた。

シーカヤックってご存知ですか?

恥ずかしながら、シーカヤックというものを今回の取材で初めて知ったのだ。
カヌーと何が違うのかさえ分からない。
初歩的な質問だが尋ねてみた。

「カヌーの多くは片っぽで漕ぐやつです、カヤックは両側で漕ぐんです。カヌーのほうが難しいと思いますよ」

それにしてもカヤックも簡単なようには見えない。
マリンスポーツはどうも敷居が高く感じるのだ。
けれど、聞けば、感覚で言うとウォーキングくらいなのだという。

「ウォーキングぐらいじゃないかな、と思います。ハイキングじゃないです。水泳なんか比べ物にならない。自転車よりも楽。大人になってから、さぁ自転車乗りましょうって乗れないですからね。カヤックは基本的に乗れば安定してますし、漕いだら前に進むし」

そういわれると、急にカヤックが身近に感じられる。

「ライフジャケットを正しく着られる方ならだれでも。過去、3歳の子にも参加してもらったことありますよ。ちなみに最高齢は89歳のおばあちゃんです(笑)」

年齢不問のスポーツらしい。どうやら本当に「ウォーキング」のようだ。

技術と楽しみ

「このカヤックは、磯部でつくられたものなんですよ」
なかなか知られていないが、志摩市磯部町では世界レベルのカヤックがつくられている。
ヨットやボートの技術を取り入れているそうだ。

「最近はカヤックフィッシングが人気ですね」

カヤックに乗って磯へ釣りに出ることを指すカヤックフィッシング。
フィッシングカヤックにはクーラーボックスと釣竿を収納するスペースもある。

また、フィッシング以外にも、離島まで漕ぎ出て離島でランチ、なんてプランもあるのだとか。「ウォーキング」とは言え、楽しみの幅は想像した以上に広い。

海抜1メートルの世界で

シーカヤックの魅力を訪ねてみた。

「簡単に非日常に踏み込めますよね。水の上に出たらもうそこは陸地とは違う世界なので。景色が新鮮になりますし、役場の人を乗せて通勤路に使うすぐそこの橋をカヤックでくぐったことがあるんです。面白いって笑ってましたよ」

橋の上は住民が毎日使うメインロード。
メインロードを横切る川を海からカヤックで漕ぎ出ることができる。
町のすぐそばを湾が走る五ヶ所浦ならではの楽しみ方といえるかもしれない。
日常と非日常のパラレルワールドだ。

かと思えば、海に出るとリアス式海岸よろしく山と海が融合した大絶景が広がる。
すぐそこに町があるとは思えない、幻想的な世界を体験することもできる。
まばゆいグリーンとブルーのコントラストに目を奪われることだろう。

「水の上にちょうど座るくらいの目線なので、それこそこの子とおんなじ目線」
そう言って話す目線の先にはまだ幼い子どもがいた。
聡一郎君(1歳7ヶ月)だ。
よちよちと本橋さんの周りをよちよち歩いたり転んだり、目が離せない。

「放っておくとここ(店舗)をぐるぐる周回してるんですよ」
本橋さんの目尻が思わず下がっていた。愛しい者を見る父親の目だった。

 

自分らしくいられるということ

妻ののぞみさんは物静かだが凛とした佇まいが美しい人だ。
本橋さん夫婦は共に他府県の出身だが、身内のサポートが得られない子育て環境に不安はなかったのだろうか。

行政の見守り

「子どもが少ないんで、子育て世代のサービスってあるのかな、ちゃんとしてんのかなっていうのはありました。支援センターがちゃんとあって、保健師さんが来てくれて色々説明してくれたのを聞くとちゃんとしてるんだなぁって安心しました」

地域の子育てセンターにはよく顔を出すらしい。
子どもが少ない地域故に、支援センターの職員はどこの子どもがどこに住んでいるか、この頃顔を出さないとか、すべて把握しているそうだ。

「その月のしおりがあるんですよ。先月の活動内容なんかを紹介してる。それが郵送じゃないんですよ」
つまり、ポスティングされているということだ。
ポスティングのタイミングで在宅していれば、ちょっと声をかけていってくれるのだとか。
急な訪問に抵抗がある人もいるかもしれないが、他県から移住してきた夫妻にとってそれは純粋に地域のぬくもりを感じられるあたたかいサポートのようだ。

「見てくれてるんやなって安心感になります」

 

「よそもん」

「ご近所さんのほうが僕らのことよく知ってますよ、よそもん(よそもの)だからでしょうね」

本橋さんは嬉しそうに言う。
田舎で暮らすということは、そこに住んでいる人のほとんどが昔からの住民である、ということでもある。
けれど、夫妻にはよそ者扱いされるということにネガティブな感情はないようだった。
周囲が気にかけてくれることをうれしいと話す。

「町あるいてておばあちゃんとお話ししたり、かわいいねぇなんて声かけてもらったり」

のぞみさんは以前、都市部で電車に乗った際に、お子さんが泣いたことに対して冷たい言葉を浴びせられたことがあるらしい。それも一度ではなかった。

「子どもが子どもらしくいてるだけやのに」

穏やかだったのぞみさんの語気が強くなった。
子どもが子どもらしくいるだけで、攻撃されることは少なくない。

「黙らせろ」「泣き止ませろ」鋭い言葉、時には目線でさえ、母親の首を確実に締めていく。

「ここは子どもがギャー!言うててもだれも怒らないし、泣いときって言えますから」

本橋さん「(それが子どもの)仕事ですからね」

まったくもってその通りだ。
自分の意思に反して子どもを制することも、叱ることもしなくていい、そんな環境は親をも自分らしくしてくれるのかもしれない。

「母親が子どもに攻撃的にならなくてすむんです」

のぞみさんはまた穏やかな表情に戻っていた。

これからのこと。

のぞみさんは仕事復帰のことを考えると憂鬱になるという。
やはり、頼れる親族が周りにいないというのは不安要素として大きいようだ。
特に仕事をするとなると。

「近くに親がいる人に比べると、簡単にはいかないかなって思います」

他にも、小児科が近くになく、伊勢市まで車で行くことも少なくないのだとか。
地方、特に田舎への移住は課題がないわけではもちろんないのだ。

不安はもちろんある。課題もある。
けれど、この町で好きなことをしながら、自分たちらしく歩んでいく。
彼らにとってそれがもっとも自然なライフスタイルなのだろう。
徒歩1分で海が、町を歩けば人の笑顔が、大切なものは目の前にある。
カヤックで沖へ漕ぎ出すように、この町で彼らは自由に生きていく。
扉を開けたらそこはもう海だ。

 

サニーコーストカヤックス
516-0101
三重県度会郡南伊勢町五ヶ所浦1007-17
TEL&FAX 0599-66-1919
HP

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ハネサエ

6歳、4歳、1歳の3児の母です。他県からお嫁に来てまだまだ三重開拓中です。得意ジャンル:子連れの遊び場、イベント情報。

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