ホーム 04【知る】 04人を知る かほりを愛する沙里さんをあなたも愛さずにはいられない

かほりを愛する沙里さんをあなたも愛さずにはいられない

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街中で見知らぬ人とすれ違った時、
ふいに甘酸っぱい気持ちが蘇る。

雨上がりの畦道で、
突如、幼き頃の想い出がフラッシュバックする。

いずれもきっかけは”香り

過去に大ヒットした失恋ソングでも、
「ニガくてせつない香り」
というフレーズは多くの共感呼んだ。

香りは記憶や感情を刺激し、
首根っこ掴んだかのように、
一瞬で想起させる力を持っている。

 

香りを聞くという雅な遊戯

凛とした空気が流れる会場に、
灰を整える微かな音だけが響く。

沈黙というコミュニケーションのなか、
大人たちが愉しんでいるのは、
香炉から立つ幽玄な”かほり

素材を感じ、
自らの内側に広がるイメージを膨ませ、
心の声と向き合う。

嗅ぐのではなく、
聞くと表現する聞香の世界。

香を聞いている間は皆、
ひらがな二文字の源氏名を名乗る。

自分が何者なのかを忘れて、
魂と香りの対話をするという意味があるのだろう。

平安時代には
香りを聞いて歌を詠むという遊びが、
姫君たちの間で流行っていたのだそう。

色や音、経験や風景を思い浮かべるのも面白いですよ

そう雅な連想に導いてくれたのは、
調香師 沙里(さり)さん。

今回の聞香の先生だ。

@Shizuku(お茶の芳茗園)

日本の伝統的な香道作法と、
西洋のフレグランス文化を融合させた現代聞香の創始者で、ブランド「かほりとともに、」を主宰。

季節や風土に合わせた「香り文化」を普及させており、
自ら植物を採取・蒸留し、天然香料100%にこだわり、
日本産精油を用いた調香を行っている。

ミラノ万博をはじめとし、
世界中からラブコールを受けている方である。

かほりとともに、公式サイトより

 

運命的に香りの道へ

沙里さんが香りに目覚めたのは、
2006年にインドネシア/バリへ行った時だった。

ふと花の香りを嗅いだ瞬間、
他界されたおじいさまとの思い出がフラッシュバック

繋いだ手の感触までリアルに蘇ったという。

幼い頃から作曲や演奏活動をされていた沙里さんは、
記憶と密接で目には見えない、
音と香りに通じるものがあると感じていた。

そして偶然にも、
本名である沙里という名はサンスクリット語で、
花の香りの強い部分を指すと知り、
もう香りが気になり過ぎて、
衝動にかられて学校に入り、
解剖生理学など人体の構造と機能から学びだした。

学びは興味を加速させ、
本格的にイギリスへと渡った沙里さん。

香りとの旅が始まった。

 

伊勢のかほり、外宮のかほり

ところで、「伊勢とともに、
というフレグランスをご存知だろうか。

沙里さんがイギリスから帰国した2011年に、
伊勢をイメージして調香し、
イメージフレグランスコンテストの環境大臣賞を受賞した作品である。

かほりとともに、公式サイトより

三重県桑名市出身の沙里さんにとって、
昔から伊勢神宮は、
日々を感謝する特別な場所だった。

コンテストのテーマはまさに伊勢。

数種類の香りを作ったものの、
提出する1本を選びきれず、
衝動的に伊勢へと向かった。

伊勢という場所は、
自分にとって何か、皆にとって何か。

五感を研ぎ澄ませて渡った、
宇治橋の檜の匂いは、
今でも鮮明に覚えているという。

そして伊勢の空気、森の香り、
そこに在る自然そのままに身を置くことで、
おぼろげに感じていたイメージが合致。

この香りと出会えたことがただ嬉しい。

そんな感謝に身を任せ、
締め切り日に送った作品が、
賞へと繋がったのだそう。

沙里さん:伊勢は原点。初心に返る時間と繋がっているんです

尾鷲ひのきや伊勢和紙等、目に見えない香りだからこそ、包むものは五感で楽しめる三重の物にこだわっている

余白のある香り

良い素材こそ少しの塩でいい

その言葉の通り、
沙里さんの香りの美学は引き算

香りの9割は、
植物などの素材が作り出しており、
自然の豊かな世界観を感じられるよう、
なるべく手を加えず、
シンプルに魅力を惹きだすのだそう。

気になる素材は例え石からでも抽出するのだそう

日本独自の文化や香りを、
大切にされている沙里さんのフレグランスは、
とても柔らかくナチュラルにとどく。

素材を旬に合わせて抽出しており、
レシピはあるようでない。

最後は素材に委ねるという。

沙里さん:かほりは刻々と変わるんです

料理で旬の食材を楽しむように、
香りも四季折々で変化する。

空気や体温と交わることで個性も生まれる。

お客さんは毎回、
同じではない”ことを楽しむ方が多いのだそう。

ワインと香りのペアリングの企画も開催された

また沙里さんは、
お客さんの想いを聞きながら、
オートクチュールなフレグランスも作られている。

抽象的なものを形にするって、
とても難しいと思うのだが、
面白いのが沙里さんの表現方法。

対象から聞こえる色や音や味をかほりに変え、
ミとファの間くらいかな♪』と話すお姿も。

香りも1番手、2番手…と
時間軸で変わるように作られており、
一瞬一瞬が身体に染み入るよう。

香りの地図のような時間軸と温度のマトリックス

お話を聞いていて、
ふと、”いい香り”とは何だろうと思った。

いや、どの香りもいい香りだからこそ、
そもそもに疑問が出てきたのだ。

沙里さん:香りは鏡。心の声に気付ける香りかな

気分に合わせて食事を変えるように、
香りも気分や体調で選ぶことで気付きがある。

また味を構成する五味(甘味や酸味など)と、
同じ感覚が香りにもあり、
例えば負の印象がある苦味も、
気付きという部分では大事なスパイスになるという。

沙里さん:香りに限らず、光と影、ハレとケ。どちらもあるから魅力や日常の意識を引き出せると感じています

お寺でのキャンドル聞香の様子

少しのハレを持ってくることで、
ケの部分がもっと豊かに感じられたり、
何が好きで何が大事かに気付く。

大事なことがわかれば、選択は迷わなくなる。

香りはその瞬間を、鮮やかに刻み、
時を越え、人やもの、さまざまな想いをつないでくれる。そんな連鎖のきっかけになれたらとても幸せ

そう話してくださった。

 

かほり、そして沙里さんとともに、

つい忘れがちだけど、
意識を傾けると空気の中には、
四季折々の香りがあることに気付く。

沙里さんはこれを『気配』という。

春先、一早く梅の蕾を見付け「抽出してみたんです!」と嬉しそう

そう、彼女に惹かれるのは、
そのライフスタイル。

答えがない世界観を楽しみ、
謙虚に学び、感謝し、
日々を丁寧に生きている豊かさ。

ときめきに素直で、
まるで音を奏でるように、
軽やかに、リズミカルに、生きている。

かほりとともに、

大事なのは最後の「」であり、香りのその先。

沙里さん:どこで、だれと、なにをして、どんなことを想ったのか。よろこびが、かほりとともに、ありますように

香りの伝道師 沙里さんを通して、
潤った五感に彩りの風が吹いた。

 


沙里さんの個展が、2018年5月12日~5月27日に名古屋のLights Galleryにて開催されます。

Exhibition 丹生 niu
hp http://lights-gallery.com/archive/2018/04/437/

かほりとともに、
hp http://kahoritotomoni.com/

福田ミキ

フクダミキ。OTONAMIE副代表。OTONA MASTER。
仕事は東京の企業の社長秘書兼オフィスワークセンター長。数年前から社会人学生でもある。2014年に夫の都合で東京から三重県桑名市にお引越し。涙したのも束の間、新境地に疼く好奇心。外から来たからこそ感じるその土地の魅力にはまる。この記者が登場する記事
※くわブロにて情報更新中

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